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第4話 ラムズの家

事件のことを夢に見るのは久々だった。 うっすらと目を開ける。 決意して入学したのに、今は劣等生もいいところだ。 悔しい…。 それにしても、ここはどこだろう…。 見慣れない天井だ。 「起きた?」 聞き慣れた声がする。 声のする方へ視線をやると、一瞬誰だかわからなかった。 自分の寝ているベッドの脇にはローテーブルがあり、ファイルや本が積んである。 そばにソファがあって、そこに一人の男が座っていた。 白いパーカーに黒いパンツ。 耳には青いピアスをしている。 徐々に意識が戻ってきた。 なんてことはない、その男はラムズ理事だ。 「こ…ここはどこですか…?」 「俺の家だよ。」 理事の家? これまでの記憶を思い出す。 パラサイトバットのコンバートをまともにくらい、眠っていたのだ。 自分の体を触ってみると、胸があり、アレが無くなっている。 確かに女になっているようだ。 てっきり、寮か学園内の保護室で過ごすのかと思っていたのに…。 僕は上体をゆっくり起こした。 「あの…。まずは、すみません…余計な仕事を増やしてしまって…。」 「あまり、気にしないで。ロキのおかげで薬や新しい魔法が開発される可能性もあるんだ。誰も怪我もしていないし。何も問題ないよ。」 優しさが沁みる。 でも、いっそ怒られた方がマシかもしれない。 優しくされる度に、自分の弱さを強く感じる。 今もまだ体全体がだるく、特に手足は鉛のように重い。 「具合は大丈夫?」 「はい…。力がはいらなくて、かなりだるいです…。あと…体はちゃんと女になっています…。」 「そうか、まず想定通りだね。もし話ができるようなら、これからのことを伝えたいんだけど、いいかな?」 「あ、はい!お願いします!」 ロキは気合いを入れ直した。 「まず、これまでのケースから言えば、完全に性転換が終わる頃にパラサイトバットはロキをさらいに来る。 予想としては、明日か明後日。 学園にいる時は、ターニャ先生とチームメイトの2人が護衛につき、それ以外の時間は私が護衛をするよ。」 24時間体制だ。 「討伐が完了すれば、まず一週間程度で自然に男に戻れる。その際も、半日は眠ることになる。あとは、考えづらいけど、護衛に失敗した場合、ロキ自身が戦わなくてはならない。毎日、戦闘力チェックはするし、学園でも訓練はしておこう。」 「はい…。」 周りは皆、パラサイトバットを雑魚扱いするが、自分一人になったら勝てるんだろうか…。 少し自信がなかった。 「あとは…もし戦闘に負けて、妊娠をした場合だ。二日で出産に至るようだが、出産状況については詳しい資料がないんだ。」 そんなことになったら…と考えて、身震いした。 「昔は恐ろしい化け物だったろうけど、戦闘技術を持つ私たちなら大丈夫だ。討伐が終わるまでは、決して一人にならないように気をつけて。」 「はい!わかりました。」 「あと、コンバートにはもう一つ特徴がある。パラサイトバットが花嫁の居場所を特定できるように、花嫁は特殊なフェロモンを発するようになるんだ。このフェロモンは人間にも作用する。花嫁が非常に魅力的に見えるようになるんだよ。これは、男女関係なく効果がある。」 資料で読んだことがある。 催淫効果だ。 「だから、女性が護衛だとロキが元は男だから間違いがあったら大変だし、男性だとロキが被害者になって大変だということで、魔術耐性が一番高い私が護衛をすることになったんだ。だから、しばらく私と一緒にここに住んでもらう。生活と護衛の両立と、強力な結界をはることを考えると、私の自宅が最適なんだ。」 それが一番なのは納得した。 が、学園だけでもラムズと一緒にいると緊張するのに、これから私生活も共にするなんて、僕は大丈夫なんだろうか…? 思わず肩に力が入った。 ラムズはロキの様子をじっと見て言った。 「……他の男の方が良かった?」 「え?いや、そんなことありません!よろしくお願いします!」 ロキは慌てて答えた。 担任とはいえ、実はラムズのことはほとんど知らない。 大変な1週間になりそうだと予感がした。

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