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第11話 俺の友達は『パンツの色がわかる超能力』があるらしい
高校2年生のマモルとケンタは、考査の勉強をしていた。
「あー、テスト用紙に答えが浮かび上がる超能力とか出ねぇかなぁ」
マモルはため息をつきながら言った。
「せっかくの超能力なのに、それじゃ地味じゃね?学生時代しか使えないし」
ケンタが言った。
「ああ、たしかに。じゃあ、無限にお金が湧いてくる超能力」
「あんまり無限だと、家の中が札束でうまっちゃう」
「じゃあ、無限に預金残高が上がる超能力」
「お金があってもさ、”マモルさんに売る品物はありません!”とか言われて、買えなかったらダメじゃん」
「え、世界中のお店から売ってもらえないの?俺、大物すぎない?どんな悪党でも買い物はできるでしょ」
二人はいつもくだらない会話をしていた。
「ケンタはどんな超能力がほしいの?」
「俺さ、実はもう超能力があるんだ」
「マジか。何?」
「お前のパンツの色がわかる超能力」
ケンタはマモルの尻を触った。
「今日はグレーでしょ」
「当たり!何でわかるの?!」
「超能力だから」
ケンタはふふん、と笑った。
「だとして、テストの答えがわかる超能力より意味のない超能力じゃね?」
「だよな。わかるの、お前のパンツの色だけだから」
たまたま腰の辺りにパンツが出てたのを見られただけだろう。
マモルはその程度に思っていた。
♢♢♢
翌日、朝登校すると、「おはよっ」と言ってケンタがマモルの尻を触った。
「今日、黒でしょ」
「え?パンツ?」
何色履いてたかなんて、自分でも覚えていなかった。
ズボンの隙間から確認する。
本当だ、黒だ。
「……む、無駄にすげぇ」
ケンタは笑った。
さらに翌日も、次の日も、毎日ケンタはマモルのパンツの色を言い当てた。
本当にそういう超能力があるか、部屋が盗撮されてるかだ。
どっちも微妙に嫌だ。
とはいえ、たかだかパンツの色くらいだ。
友情にひびが入るほどではなかった。
♢♢♢
ある日、母親が血相を変えてマモルの部屋に来た。
「マモル!ミカが塾の帰りに事故に遭ったみたいなの。お父さんとお母さんは病院に行くから、おばあちゃんと留守番よろしくね」
「うん、わかった……ケガは、大丈夫なの?」
「意識はあるけど骨折してるって。今日は検査も含めて入院になるみたい。相手が逃げたらしくて、警察ともやりとりしてくるね……」
ひとまず妹が骨折で済んだのは良かった。
でも、轢き逃げなんて酷すぎる。
部屋を出て一階に降りると、おばあちゃんが仏壇を拝んでいた。
リビングのソファに座って、テレビをつけた。
なんとなく、ケンタに妹の話をメッセージで送った。
『事故現場って、どこなの?』
家の近くのコンビニ前と伝える。
しばらく連絡が途絶えて、一時間後くらいにまたケンタからメッセージが来た。
『犯人は、白のセダン。爺さんが運転してる。車のナンバーは……』
そんなことが書いてあった。
俺は急いでケンタに電話をした。
「あのメッセージ、何なの?」
『俺さ、物が持ってる記憶を読む超能力があるんだ。事故現場で散らばってた、自転車の破片からぶつかった車が見えた。説明が面倒だから、ミカちゃんが見て覚えてたていで、警察に言ってみてよ』
ケンタの言う通り、母親に電話して、妹に代わってもらった。
妹も、白のセダンはわかっていて、うっすら見たナンバープレートの数字もそんな感じだったと言ったので話は早かった。
♢♢♢
翌日の朝、ケンタと挨拶はしたが、尻は触ってこなかった。
「お前……本物だったんだな……」
「まあな」
「まず、ありがとうな。妹のためにやってくれて」
「大事に至らなくて良かったよ」
「……ところでさ、せっかくの超能力を、俺のパンツの色を言い当てるだけに使うのって、健全な男子と思えないんだ。他に、何に使ってるの?」
「……まあ、いいじゃん、そこは。いざ、便利そうな力があってもね、余計なことを知ると幸せになれないよ」
「……それもそうか。たとえば机の記憶を読み取ったら、友達に自分の悪口言われてた、とか?」
「そうそう。小さい頃は、自分の力の意味が分かんなくて、見えたこと全部口に出したら気味悪がられてさ。超能力なんて、あっても面倒くさいよ」
「なるほどね……」
「あのさ、マモルは、俺のこと嫌にならない?まあ、俺がその気になったら、結構何でもわかっちゃうわけで……」
「……そうだな……そうかもだけど……お前は、そう思われるかもしれないのに、妹のために、力を使って教えてくれたじゃん?そんな正義の味方に失礼なことはできないよ」
「…………………………」
「大体にして、俺に秘密らしい秘密もないしな!逆に秘密が無い仲って、すごくない?」
「……そう言ってくれるなら……助かるよ……」
「俺は、変わらず友達でいてほしいよ。正義の味方にだって、仲間はほしいだろ」
「そうだな……。まあ、そんな物騒なことに首を突っ込む予定はないけど」
それから、マモルはケンタの超能力の精度を上げる訓練をし始めた。
「えっと……今日のパンツの色は……マーブルっていうの?色んな色が混ざってるやつ」
「そうだけどさ、そんなあやふやな情報じゃ犯人逮捕にはいかないよ。もっと、見たものを的確に表現しないと」
「そうだけどさ。いや、犯人逮捕って、俺に何させようとしてんの。それに、色の名前なんてわかんないよ」
「ほら、これ。色見本。色の名前をこれで覚えようよ」
「……いっぱいありすぎるよ。わかんねぇ」
「俺もできる限り複雑な色のパンツ買うようにするからさ、お前も頑張ろうよ」
お前はパンツ買うだけじゃん。
そう思ったが、マモルの楽しそうな様子と、尻を毎日触れるからまあいいか、と思ったケンタだった。
―完―
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