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第45話

「君の食事の話は分かっていない訳じゃないんだ」 那月が俺の事を食料だとしか思っていない事は知っている。 二人きりになった室内で宗吾さんは俺に言う。 僕は宗吾さんを見つめてそれからよく分からなくなって、ハウスキーパーさんに渡されたペットボトルを見る。 どう見ても楽しむためじゃないそれを同じ淫魔であるはずのハウスキーパーさんは普通に渡していた。 まるで彼は人間の様で、宗吾さんもまるで人間相手の様に接していた。 「宗吾さんはなんで俺に触れるんですか?」 彼が僕になぜか執着していることだけは、二人の話を聞いていて分かった。 だけど、金魚鉢にしても指輪にしても、性的な興奮を伴っているようには到底思えない。 別にこの人は俺の事を愛している訳でも、無条件に性的な対象として見ている訳でもないのだろう。 じゃあ、何故この人は僕に触れたのだろう。 僕がかわいそうだったからだろうか? それとも、まともに食事を摂っていなかったから緊急措置的なもので僕に手をのばしたのだろうか。 「なんであなたは僕とセックスをしてくれるんですか?」 いざ、してくれないとなれば餓死しかねないのに、そんな事を聞いてしまう。 なんと答えられても、多分僕の生活は変わらないのに聞いてしまう。 話合った方がいいと言われたけれど、本当は何を話合ったらいいのかさえ分からない。 いつか、誰かから愛がもらえるのかなんて僕には分からない。 愛があれば救われるかさえも僕には何も分からない。 「僕は本当にここにいてもいいんですか?」 宗吾さんが息をのむ音が聞こえた。 「あなたは僕に本当に満足してるんですか?」 つたないセックスも、貧相な体も、気の利いたことの言えない口も何もかも、この人が気に入っているのかが分からなかった。 ただ、執着しているというだけで他のものが満足できるとは僕には思えなかった。 宗吾さんが僕の頭に手をのばそうとして、手の動きをその直前で止めた。 彼に頭を撫でられるのは確かに好きだった。それだけは確かだった。

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