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第73話
宗吾さんは嬉しそうに笑った。
僕のそれは睦言として拙かったのに、嬉しそうな笑顔を浮かべている。
彼は僕を快楽で追い詰める様なセックスが好きだと言っていた。
だからこんな拙い繋がりあいで嬉しそうにしていて、心臓のあたりが疼く。
「僕はあなたに気持ちよくなって欲しいんです」
そう言って宗吾さんの髪をそっと撫でた。
僕が好きな宗吾さんのしぐさをつい真似してしまった。
宗吾さんは多分僕のそれが彼の真似だと気が付いたと思った。
僕が宗吾さんの頭から手を離すと同じように僕の頭を撫でる。
思わず目を細めてしまう。
僕は宗吾さんに撫でられることが本当に好きになった。
もしかしたら僕が一番好きな瞬間なのかもしれないとさえ思う。
思わず強請《ねだ》る様に宗吾さんの手に頭をこすりつける。
笑みを深めながら宗吾さんが僕を撫でてくれた。
それから宗吾さんは僕の中に入ったままごろりと寝転ぶ。
前から思っていたけれど、宗吾さんは均整の取れた肉体をしている。
綺麗についている腹筋は鍛え上げられている様に見えた。
「俺に気持ちよくなってほしいんだっけ?」
宗吾さんの問いに頷く。
「じゃあ、自分で動いて俺の事『気持ちよく』して?」
それが宗吾さんからの淫らで意地悪なお願いだと気が付くのに、きっかり三秒かかってしまった。
見下ろした宗吾さんは妖艶な笑みを浮かべている。
無理だと答えれば違う体位になったのかもしれない。
だけど、宗吾さんがそれを望んでいるのならと思った。
膝をつけるようにして、少しだけ宗吾さんの物を引き抜く様に腰を上げる。
人間はこの感覚を排泄感というらしい。
知識では知っている筈の感覚が、快楽として体に広がる。
恥ずかしい声がもれる。自分で動かしているのに、「あっ……」っというもの欲しそうな声が出てしまった。
宗吾さんの起立をギリギリまで引き抜いて、体重を重力に任せる。
一気に、ずんって体内に戻っていく感覚に嬌声が上がってしまう。
単調な動きなのに、たまらない。
少しずつ大胆に動きを速めてしまう。
別にそんな事しなくていいのに、前立腺を擦る様に腰を動かしてしまう。
これじゃあ、宗吾さんを気持ちよくするんじゃなくて、自分が気持ちよくなるための動きだ。
そう分かっているのに、腰の動きを止められない。
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