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第8話 ※清香

碧斗くんと先生と近所の花火を見に行くことになった。 私は少しだけ、碧斗くんと距離が縮まったような気がして嬉しかった。 道中も、美しい男2人と並んでいるため人々の視線にいたたまれないものの少しだけ優越感を感じていた。 そして、気分よく気を利かせて2人の食べたいものの買い出しに行く。 碧斗くん、食べられないものとかあるかな? 全部、順調だと思っていた。 このまま、先生のお姉さんにもご挨拶できたらいいなぁ。 いきなりご両親は緊張するもんね。 まぁ、そうなるか分からないけど。 と1人で浮かれていた。 さっきまでは。 今、見ている光景をどう処理して良いのか分からい。 碧斗くんが、泣きながら先生を見つめている。その視線を先生も真っ直ぐに受け止めている。 あんな顔を私は見たことがない。 困惑しているような、でも冷静な目で碧斗くんを見つめている。 さっきまでの喧騒が嘘みたいに、人々の笑い声も太鼓の音も、どこか遠くで響いているだけ。 私は昨日の夜のことを思い出した。 あ。碧斗くんの、あれ。 あれは、先生の部屋で先生がいたからだ、、、。 怖い顔もどこか少しの怒りを感じたのも私に向けられていたものだ。 少しでも、私がいたから、、、?なんて思ったなんて自惚れにも程がある。 そんな自分に吐き気がするほどの恥ずかしさが押し寄せる。 碧斗くんから出ている色気というか、艶みたいなものはなんなんだろう? 女の私には無いものを彼は持っている。 いやいや。何を落ち込む必要がある? 私は先生の彼女だ。相手は甥だ。 甥と叔父じゃないか。そもそも間違いなんだ。 きっと今、思春期だから間違った方向に気持ちが向いているだけなんだ。 先生が碧斗くんの体を寄せた。 私はこのあとどんな顔をしたら良いんだろう? 心臓がバクバクしている。 さっきから思考がまとまらない。 落ち着け。甥と叔父だ。 正しいわけが無い。 私は堂々としていれば良いんだ。 言い聞かせながら、私は2人の元に戻る。

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