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第9話 ※碧斗
ライブ当日になった。
「やっぱり女の子いっぱいきてるよー!」
小さい楽屋のなかで原田くんが興奮していた。
「学校の女子にもチケット、結構買ってもらったしな。」
得意げに奏が言った。
岳くんは、興味なさげにベースを弾いている。
「おつかれー。」
楽屋に誰か入ってくると同時に、「おつかれさまっす!」と奏が元気よく叫んだ。
年齢は20代後半くらいだろうか。岳くんと同じくらい身長が高く、細身の男が入ってきた。
派手なシャツを着ていて、髭も生えているが、おじさんみたいな無精髭ではなく清潔感があった。サングラスをしているがその奥の目は彫りが深くハーフのようだ。
「あ!トーヤさん碧斗初めてですよね?紹介します!」
「え。かわいいじゃん。女の子メンバーに入れるとかやるじゃん。」
僕を見てヘラっと笑った瞬間、目が垂れた。
「ちっがいますよ!男ですよ!碧斗、この人はトーヤさん。今、大学2年生。
兄貴の友達で、俺たちの面倒見てくれてんだ。今日もトーヤさんが呼んでくれたんだ。」
「どうも。碧斗です、、、。大学2年生ってことは、20歳、、、!?」
僕は思わず口に出してしまって、慌てて口に手を当てた。
トーヤさんは、最初キョトンとして豪快に笑った。
「大人しそうなのに、なかなか失礼な奴じゃん。」
「素直な奴なんすよー。」
僕は顔が熱くなるのを感じた。
「今日、ライブ終わったら軽く打ち上げしようぜ。」
そう言うとトーヤさんは楽屋を後にした。
「ぜひ!!」
奏も原田くんも声を揃えて言った。
岳くんは小さく頭を下げた。
トーヤさんが出た後も2人ははしゃぎながら言った。
「やった!打ち上げだってよ!岳も来るだろ?」
原田くんが、こっちを向いて聞いた。
岳くんは小さくため息をついて、頷いた。
「よろしく頼む!碧斗は強制参加な!」
「う、うん?」
僕は勢いで頷いた。岳くんが、珍しく後ろでぼやいている。
「トーヤさんの打ち上げ、俺苦手なんだよな、、、。」
僕たちの出番が来て、ステージに上がったとき奥にきよかが立っているのが見えた。
結局、あの後何回かきよかに会うことがあり、チケットをせがまれ仕方なくチケットを渡した。
おじさんを連れてこないことを条件に。
僕はおじさんがいないことに、ホッとしながらギターを鳴らした。
ギターを弾きながらふと客席に目を向けると前の席で女の子たちが恍惚とした眼差しでこっちを見ている。
ライブを無事に終え、僕らはトーヤさんのいるテーブルに行った。
トーヤさんの他にも男の人が3人いて、あとは女の人も何人かいた。
「おつかれー!お前ら、すげぇ人気じゃん!
お前らのライブの後も女の子たち騒いでたぞ。」
「碧斗が、入ってからファン増えたんすよ!」
奏くんが嬉しそうに言った。
「お客さんがほとんど女の子なのが、ちょっと気になるけど。」
後ろから、女の人の声が聞こえた。
振り返るときよかが、立っていた。
「あ、、、。」
僕が呆気に取られていると、原田くんが思い出したように言った。
「こないだ、カフェにいた、、、。」
「おじさんの彼女だよ。」
「帰ろうと思ったら碧斗くん見つけたから、ちょっと挨拶しようと思って。すっごくかっこよかったよ。先生にも言っとくね。」
余計なこと言わないでって言おうとするとトーヤさんが近づいてきた。
「この後、一緒に飲みますか?」
トーヤさんが、きよかに言った。
きよかは、にこやかな顔を一瞬で冷たくさせ言った。
「あっちに友達いるんで。碧斗くん、またね。」
僕に顔を向き直して笑って言った。
きよかはこの後、おじさんの部屋に行くんだろう。そして僕の様子を話すんだろう。
僕は咄嗟にきよかの腕を掴んだ。
「え?」
きよかが振り向いた。
「、、、僕未成年だし、不安だからこの後一緒に来てほしい、、、。」
僕は咄嗟に浮かんだ嘘を並べた。
ただ、きよかをこのままおじさんの所へ行かせたくなかった。
「いや、、、。でも私、、、。」
「お。じゃあお姉さんも一緒に行きましょ!」と奏が無邪気に言った。
「んー、、、。まぁ心配だしちょっとだけお邪魔しようかな。」
きよかは明らかに困惑していたが、気を取り直したように言った。
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