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第11話 ※碧斗

おじさんは僕を風呂場まで連れて行くと、服を脱がせようとした。 「自分で入れるから、いい、、、。」 僕は自分で服を脱ぐと、赤くあざがついた腕を持ち上げて聞いた。 「お前、これどうした??なんかあったのか?」 今まで見たことない真剣な顔だった。 僕は無言で手を振り払ってシャワーを浴びた。 まだ胃が気持ち悪い。今すぐ歯を磨きたい。 いや、それじゃ足りない。 このままシャワーを喉に突っ込んで洗い流したい。 おじさんに、汚い僕を触って欲しくない。 そのまま、おじさんの服を借りて歯ブラシも借りた。 風呂場から出ると、ソファにおじさんが頭を抱えるように座っていた。 「落ち着いたか?」 おじさんが、疲れたように笑い言った。 その顔を見て、ようやく気持ち悪さが引くのを感じた。 僕は無言で頷いた。 「よし。今日はもう寝るか。」 おじさんが伸びをしながら言う。 バーで何があったのかは聞こうとしない。 本当に興味がないのか。気を使っているのか。 「、、、なにがあったか聞かないの?」 おじさんは、キッチンでタバコを吸っている。 「ま。母ちゃんに心配だけはかけるなよ。」 それだけだった。 僕はおじさんのベッドで寝て、おじさんはソファで寝ていた。 寝ていると、ふとバーのトイレの男の顔が近づいてきた瞬間が浮かぶ。 そうだ、、、。僕は思い出した。 あの嫌悪感を前にも感じている。中学一年生の頃だ。 クラスの女の子が具合が悪くなったから、保健室に付き添ったんだ。 ベッドまで運んで欲しいと伝えると、その女の子が僕の首を引き寄せキスしようとしてきた。 僕は体を力を込めて離し、逃げるように保健室から出ていった。 その時の女の子の顔は覚えていない。その日は学校を早退して家に帰ると、おじさんが家にいた。 僕はおじさんの顔を見ると、安心してそばで毛布にくるまって横になった。 母さんに、「ベッドで寝たら?」と言われてもおじさんのそばにいたのを覚えている。 次の日、学校へ行くと僕が女の子に無理やり迫ったと噂が流れていた。 くだらない。 人の厚意に付け込んで、平気で暴力を振るう。 勝手に気持ちを押し付けてくる。僕はずっと気持ちを抑えているのに。

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