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第2話
「シャワー、どうぞ先に使って」
久しぶりのラブホテルに緊張しているのを隠して上着とバッグをソファに置き、足を組んで座って慣れたフリをする梶山だが、ぐいっと腕を引かれた。
「いいえ、一緒に入りましょう」
「え、あっ!」
半ば抱えるようにしてバスルームに連れ込まれ、あっという間に服を脱がされた。
内心ドキドキマックスだが、若者は大人なら後腐れがないと自分を選んだに過ぎないだろうから、余裕を見せねばならない。
(落ち着け、落ち着け俺)
気づかれないように目線を一瞬斜め下に動かし、瞼を伏せて小さく鼻から息を吸う。梶山は塾講師だ。生徒の前でなにか動揺することがあるときも、この方法で乗り切っている。
「そんなに焦らなくても俺は逃げないよ……って、えええ!」
よし落ち着いた、と瞼を開いて若者を見た次の瞬間、梶山は動揺を通り越して驚愕してしまった。
眼鏡と、気がつかなかったが被っていたウイッグも外し、服を脱ぎ去って一糸まとわぬ姿になった若者は、なんとカメレオン俳優と呼ばれる実力派の人気俳優「芳野隼人」ではないか。
「き、き、き、君は! もしかしなくても!」
「あ、俺のこと、わかります?」
「当たり前です。推しです! 顔ちっさ、足長っ。ぇ、ナマのビジュやばっ!」
年甲斐もなくすっかり興奮する梶山は、裸なのも忘れて直立し、隼人に見惚れてしまう。
隼人が実力派と言われるのは、イケメンな以上に演技がうますぎるからだ。海外のハイブランドモデル出身の隼人は美しく均整の取れたプロポーションを持ち、きりりとした目元と引き締まった口元の、精悍な顔立ちをしている。どの国のモデルにもひけを取らないイケメン中のイケメンなのだ。
「生の芳野隼人……尊すぎる」
「そっちか……」
ついに拝んでしまうと、隼人がなにかをポソリとつぶやいた。聞こえなくて首を傾げると、ニコッと微笑んでくる。まぶしくて目が潰れそうだが潰れても本望だ。このままずっと見つめ続けていたい。
「……嬉しいな。あなたの推しが俺なんて」
隼人が手を伸ばしてくる。頬に触れられ、今さらながら畏れ多さに身体を強張らせると、さっと横抱きにされて、唇を奪われながらシャワーを降らされた。
「ふぅ……ん、んんっ、芳野さ……」
「隼人君って呼んでほしいな」
「あっ……隼人君っ」
「そう、それでいいよ」
隼人は最初から口内を貪り、全身をくまなく撫でてくる。洗い場では手だけで一度イかされ、泡でいっぱいの浴槽では背面座位で突き立てられた。
バスルームでの刺激的な情事に、四十路の頭はすぐにのぼせ、身体はへとへとになって力が抜ける。
それでも隼人の熱杭は収まることを知らず、梶山を情熱的に求めてきた。
「せんせ、素敵だよ。せんせの中、締め付け最高で出たくなくなる」
「やぁっ、もうだめぇ、そんなおっきいの、中にずっといたらお腹破れちゃうぅ!」
せんせ、ってなんだろうと考える余裕はない。筋肉質の隼人の杭はそれ自体も筋肉のように硬くて太い。そして長い。
動かれたらそのたびに脳天まで突き刺されそうだが、動かれなくても腹の中に熱の塊を宿しているようで、はらわたが溶けてしまいそうな気がした。
「そんな可愛いこと言わないでよ。興奮しちゃうよ」
脚を持ち上げられ、身体をふたつに折られた。最奥に杭が刺さる。
「ひぐっ」
その位置で腰をぐりぐりと回して押し付けられ、硬い胸の蕾をかじられれば、もうほとんど透明に近い粘液が隼人の半分ほどのサイズの熱芯から飛び散った。
「触ってないのにイくとかエロすぎでしょ」
「や、やあぁぁ! もう許してぇ、許してぇ、もう何回もイってるからぁ……!」
身体が激しく前後に揺れるほど激しく突かれて、梶山は悦楽に泣き叫ぶ。その後もバックで、対面座位で立位で……結局五回も続けて欲をぶつけられて、気絶はしないまでも抜け殻のようにベッドに横たわった。
(若い子、怖い……)
一方あれだけ激しい動作を続けたのにも関わらず、隼人は少しも疲労を見せず、梶山の身体を拭いたり水を口移しで飲ませてくれて、とても甲斐甲斐しく優しい。
(怖いけど……やっぱり、かっこいいな)
これはワンナイトの相手へのお礼的な演技なのだろうか。梶山がウトウトし出すと、隼人は「好きだよ」とくり返して啄むようにキスをして、抱きしめて寝かせてくれた。
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