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52 怖くない※R18回

 史也は、本気で俺を液体にするつもりらしい。 「んぁ……っ、はあ、あ……っ」  俺の穴に最初の指が差し込まれてから、大分時間が経った。今、ようやく三本目が挿入されたところだ。途中でローションを足されて、とにかく俺が痛くならない様にと、前も触ればお尻も内腿も興奮気味に触ってきて、俺の感度は全身性感帯状態になっていた。 「も、もう……っ挿れてよ……っ」  息も絶え絶えになっているのに、奥まで来てくれないもどかしさ。ゾクゾクしちゃって、もう史也の荒々しい雄を受け入れることしか考えられなかった。  なのに、まだくれない。 「史也ぁ……っ! 辛いよ……っ」  甘えた声が出たけど、もうこれが限界だった。  なのに史也は、会陰に舌を這わせる。欲しいのに。欲しすぎて身体がおかしなことになってるのに。 「陸……中でイッたことある?」 「へ……?」 「ねえ、ある?」  非常に答えにくい質問だけど、黙っていたって仕方ないのも確かだ。俺はボソボソと答えた。 「んー……それっぽいのは、何となくはあったような……」 「ないってことね」 「……ん」  なんでそこでクスクス笑ってるの、史也。怖いんだけど。 「独りよがりなセックスだと、なかなかそこまで至らないらしいよ」 「へ、へえ……」  俺のケツ穴をぐぽぐぽ言わせながら、何を語ってんのこの人。――あっいいところ当たったし。ビクンッと身体が反応すると、史也が俺の股の間で笑ったのが分かった。そこで笑わないで。 「前戯短いと駄目らしいし」 「へえ……」 「今日がもし駄目でも、俺がイカせてあげられるようにするからね」 「う、うん……?」  もしかして、涼真と張り合ってるのかな。可愛い嫉妬だけど、そのせいでこの長い前戯があったと思うと、ちょこっと執念を感じなくもない。 「ふ……っ」 「陸、可愛い……っ」  史也の舌と唇は、しつこいくらい俺の気持ちいいところを刺激していく。  もう駄目。溶けちゃいそう。お尻だけ突き出した格好でくたりと脱力すると、史也が楽しそうに呟いた。 「……そろそろ液体になったかな」  細目の奥の光が怖いよ。  でも、確かに液体にはなったかもしれない。でろでろ。 「もう……溶けてる……」 「ふふ、じゃあ挿れようか」  史也がようやく顔を離して、穴から指を抜いた。途端、感じる喪失感。 「……んっ」 「可愛い、息してるみたい、ふふ」  史也の息が、俺のケツに掛かった。観察してるぞこの人。しかも人のケツの穴を見て可愛いと。  物凄い愛だなあ、と半ばぽーっとしながら史也を振り返ると、汗でびっしょりの史也の姿がそこにあった。痛そうなくらいビキビキに勃ち上がった雄に、くるくるとコンドームを付け始めている。いよいよ、というか、ようやくだ、というのが俺の感想だった。もう早く欲しくて死んじゃいそう。  でも、俺をほぐす為に、こんなに汗だくになるまで懸命に頑張ってくれたんだ。愛されてる感がえげつなくて、涙が滲む。挿れる前からもうすでに幸せなんだけど。 「陸……いい?」  俺の腰に手を触れた史也が、やっぱり確認してきた。全くもう。  史也を振り返る。俺を熱っぽい目で見つめ続けている、俺の可愛いヒョロい細目の恋人を。 「早くってずっと言ってただろ。もうきっついんだけど」 「だって、気持ちよく溶けてもらいたいもんね」 「全く……」  クスクスと笑ったけど、ひとついいことを思いつく。さっきから史也に振り回されっ放しだから、ここは俺もひとつくらいやり返したいじゃないか。 「あ。なあ史也」 「ん?」 「挿れる前に、ちゃあんといただきますって言えよ」 「……ぐうっ」  史也から変な声が聞こえてきたな、と思った直後。 「――いただきますっ!」 「えへ、召し上が……うひゃんっ!」  穴の入り口に固いモノが当たったな、そう思ったのは本当に一瞬で、すぐに史也の固い雄が一気に俺の中に突き進んできた。 「か……っはあ……っ」  目がチカチカして、暫く息も出来ずに身悶える。 「陸、そんな可愛いこと言っちゃ駄目だよ……」 「ふ、史也……?」  ゆっくりと振り向いた。そこには、俺の腰をがっちりと掴んでふうー、ふうー、と荒々しい猛獣の様な息を繰り返す、恐ろしい雰囲気を纏う男がいた。  ずず、とゆっくりと更に奥へと入ってくる。征服されてる感が堪らなかった。 「優しくできなくなっちゃうよ……!」 「ふぇっ」  あまりの眼光の鋭さに、思わず俺は逃げ出そうとする。だけど勿論そんなのは無駄な努力で、史也は俺の両足を抱えると、ぐんっ! と奥まで入ってきた。 「――ああっ!」  手押し車みたいな格好になった俺は、そのまま枕に顔を伏せる。 「……逃げないでよ」 「だ、だって……」 「まあ、もうでろでろで逃げられないだろうけど」 「ふ、史也怖いんだけどっ!」 「えへへ、いくよー」  呑気な声が聞こえてきたので、あれ、ちょっと落ち着いたかなと思ったけど、全然違った。  俺の足を抱えたまま、史也がパチュパチュと甘い水音を立て始める。初めは短めに、次第に長く早く。それと同時に、全身に快感の鳥肌が立って、もう俺は史也を感じること以外何もできなくなった。 「おっあっあっや、あ、……ああんっ」 「陸、可愛い……っ陸!」  は、は、という史也の息だけですら、耳に入れただけで俺の感度をどんどん上げていく。なのに、触れる力強い手が、暖かい俺を貫く雄の象徴が、俺の頭を馬鹿にしていくんだ。 「あ……っ! ひゃ、ふうぅ……んっ!」 「陸、もっと声聞かせて……っ」 「んっ史也ぁ……っ!」  不思議と、前までヤる度に感じていた「女みたいで気持ち悪い」っていう感情は起こらなかった。だって、史也はどんな俺だって受け入れてくれるから。 「あんっ! 史也っもっと、もっと……!」 「陸……っ可愛い……っ!」  パンパンと史也の腰が俺のお尻に叩きつけられて、自分がどこにいるのか分からなくなってきた。  俺のダメなところを嫌ってほど見せたのに、史也は俺を馬鹿にしなかった。可愛いって、好きだって大声で堂々と言ってくれた。 「史也……っ好き……っ!」 「……! 陸、陸、陸ー!」  史也の動きが益々激しくなって、俺はもう顔を上げていることすらできなくなってくる。 「あっああ……っ! なんか、なんか来る……っ!」 「陸、力抜いて受け入れて……っ!」  訳が分からないよ。なのに何か来るって分かるんだ。でも、怖い、怖い――!  激しく揺さぶられていると、自分の親指が視界に入った。そうだ、これを噛めば怖くは――。 「陸……!」  史也の手が、俺の左手を上から握り締めた。  俺は半ばパニックになりながら、涙目で史也に訴える。だって、甘えていいんだから。史也は俺が甘えても笑わないんだから。 「こ、怖い……! 何か来るんだ……っ」  史也が俺に覆い被さり、耳を食んだ。 「怖くないよ……俺が一緒にいるから」  それを聞いた途端、俺の中の俺を縛り付けていた何かが、バチンッと弾ける音が聞こえた気がした。  史也の熱い肌。優しい声。そうだ、史也は俺をずっと守ってくれていたじゃないか。なら、大丈夫に決まってる――! 「陸、好き、大好き……っ!」 「史也……っあ、あ、あ、ああ――……っ!!」  史也に全てを預けた瞬間。  俺の中に満ち溢れたのは、これまで感じたこともなかった快感の嵐と。  ――深い安堵だった。

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