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1-01罠をはって待っている

「おや、まぁ。鈴(りん)、そのほっぺたどうしたの? 赤くなってるよ」 「あー、何人目か分からん彼女候補から、最低男って言われて頬を叩かれた」 「鈴はモテるから、彼女候補でいいです。そんな女子を食い散らかすからね」 「なんだよ、裕介。お前も俺が悪いっていうわけ?」 「いや、この場合は彼女候補でいいって言った女の子が悪いね」 「そうだろ? 彼女候補でいいから抱けって、そう言ってきたのも向こうだぞ」  放課後に僕たちは鈴の家で勉強会をしていた、いやただおやつを食べながらだべっていた。そうしたら僕の親友の西村鈴(にしむら りん)が頬を赤く腫らしていたので、原因は何なのか聞いてみたらこんな調子だ。鈴は薄茶色の髪に茶色い瞳をしていて顔がとても良く背も高かった。だから鈴は女子にモテまくっていた、鈴には沢山の彼女候補がいた。 「鈴は顔は綺麗だし、背も高いし、皆の人気者だし、勉強もスポーツもできるからね」 「ハッ!! そんな外見と能力の高さだけで判断されるのは俺は嫌だ」 「そうは言うけどね、鈴。人間の第一印象は見た目で決まるんだよ」 「……俺が好き……奴はそんなこと気にしねぇ」 「え? ごめん聞き取れなかった。何て言ったの?」 「なんでもねぇよ」  鈴はとてもカッコいいから彼女になりたいという女の子が現れるのだが、鈴は要らないと言って正式な彼女を作らなかった。すると女の子は彼女候補でもいいから、そう言いだすのがいつものことだった。そんな彼女候補の女の子を抱いて、鈴が食べてしまうのもいつものことだった。ほとんど女の子の方から抱いてと言われるのだ、鈴はモテない男子の敵かもしれなかった。 「大体、鈴が正式な彼女を一人作ればいいんだよ。それで鈴が叩かれることもなくなるさ」 「…………正式な彼女なんて要らない」 「これでもう十数人目だっけ、鈴の理想はよっぽど高いんだね」 「俺の理想は俺の話をちゃんと聞いてくれて、傍にいても気が楽で、綺麗な黒髪の人が良い」 「そんな子、彼女候補にも何人かいなかった? ああ、鈴の話をちゃんと聞くってところが駄目なのか」 「クラスの皆は彼女候補を複数作ってる俺が悪いってさ、向こうが大体そう言いだすのに」  僕こと岩崎裕介(いわさき ゆうすけ)はごく普通の黒髪に黒い瞳で鈴の幼馴染で親友だ、そして僕はよく皆とは違った考え方をすることが多かった。この場合には普通なら彼女候補を何人も作っている鈴が悪い、そう一般的な考えの人々は思うんじゃないかと思う、でも僕は彼女候補でもいいと言いだした女の子が悪いと思った。鈴の方は本気でないのに、勝手に本気になった女の子の方が悪いのだ。 「それより裕介、またしようぜ」 「またかい、鈴。他の彼女候補を抱いてくれば良かったのに」 「女に訳分からん理屈で頬をぶっ叩かれて、すぐに他の女に手を出す気になれなかったんだ」 「はいはい、ちょっと待ってコンドームまだあったかな?」 「ほいっ、追加を買ってきた」 「その優しさの百分の一でもいいから、彼女候補に伝えれば叩かれずに済んだのに」  それから僕たちがしたのは勉強ではなかった、お互いの性器にコンドームをつけて相手のものをこすって遊んだ。確かこんな遊びを始めたのは中学生からだ、鈴がコンドームを買ってきて使い方を知りたいと言いだしたのだ。それで僕も興味があったからコンドームをつけて、そして自分のじゃつまらないから相手のものを刺激して遊んだのだ。 「裕介、裕介、もっと触って、ああ!! やっぱり女とのセックスより気持ち良い!!」 「そんなこと言ってると、鈴。正式な彼女がますます遠くなるよ」 「いいんだよ!! ああっ!! 気持ち良い!! 正式な彼女なんて要らねぇ!!」 「僕も気持ちが良いや、鈴の触り方は上手いね」 「あっ、いく!!」 「ん、僕も気持ちが良い。いけそう!!」  僕たちはそうやって何回かぬき合いっこをした、もう高校三年生なのだから僕にも人並みに性欲があった。でも僕は綺麗で背も高い鈴と違って、顔はまぁまぁで背は少し鈴より低かった。それになによりクラスの人気者の鈴と違って、僕は一人で本でも読んでる方が好きという性格だったから、だから僕には鈴みたいに彼女になりそうな女性は現れなかった。 「なぁ、裕介。口でしてみようぜ、コンドームつけてるから汚くはないだろ」 「ええ、それ何度も言われてるけど、僕はちょっと抵抗があるなぁ」 「何でだよ、相手にしてやるのが手から口に変わるだけだぞ。なぁ、一回だけ!!」 「まぁ、ちょっと特別な体験をしてみるのもいいかな」 「やった!! それじゃ、まず俺がやってみるから裕介はベッドに座れよ」 「はいはい、分かったよ」  前々から鈴は手で相手のものをこすって射精に導くだけでなく、口でもしてみたいと言っていた。僕は手はまぁいいけれど口で鈴のものをくわえるのは、コンドームをつけていても抵抗があってそれを断っていた。でもなんだか今日は鈴は彼女候補に叩かれて、それに落ち込んでもいるようだから、僕は一回だけならまぁいいかと思って承諾した。結論から言うと手でするのと、口でして貰うのはまた感じが違って気持ち良かった。 「ありがと、鈴。これはこれで気持ちが良いね」 「……裕介は俺のにできるのか、無理なら別にいいけど」 「鈴にできたんだから、僕にもできるでしょ」 「そうか、でも嫌になったらすぐ言えよ」 「はいはい、鈴。ベッドに座って」 「おっ、おう」  それから僕は鈴の性器をコンドームをつけたままくわえてみた、さっき僕がして貰って気持ちが良かったところを刺激してみた。コンドームをつかっているとゴムの匂いがするが、それで男性器特有の匂いも僅かでわりと抵抗なくできた。何故か鈴は顔が真っ赤になって、それにいつもより興奮しているようだった。そのおかげでそれほど口を使わなくても、鈴はいつもより早くいってしまった。 「最高!! ああ、やっぱり俺は正式な彼女なんて要らねぇ!!」 「ええ~!! それじゃ僕が鈴をたぶらかしたみたいじゃない」 「裕介にならたぶらかされても良い、いやむしろ俺はそうされてみたい」 「残念でした、親友をたぶらかしたりしないよ」 「ひっでぇな、裕介。俺のことを弄んだのかよ?」 「まさか、大事な親友にそんなことしたことないよ」  僕が大事な親友というと何故か鈴が泣きそうな顔をした、そうして僕に突然抱き着いてきたので驚いた。鈴は僕のことをとても大切そうに、でも逃げ出せないくらいの力で抱きしめてきた。僕は鈴に何か遭ったのかと思って顔を見ようとした、でも鈴は僕にしがみついたまま顔を見せてはくれなかった。そうしてしばらく経つと鈴はいつもの顔に戻って、僕から離れて楽しそうに笑った。 「それじゃ、こんどからコンドームでフェラも追加な」 「鈴、一回だけって言わなかったっけ?」 「だって気持ち良かっただろ、だからまたしようぜ」 「まぁ、確かに気持ちは良かったけどね」 「よっし、そうだろ。だからまたしてくれよ~!! 親友!!」 「はいはい、分かったよ。あっ、鈴。そろそろ僕は帰る時間だ」  僕たちが遊んでいられる時間はもう過ぎていた、鈴の両親は共働きの放任主義で鈴は一人っ子だった。だからなのか鈴はいつも僕が帰るというと寂しそうな顔をした、家に一人でいる時間が多いから鈴は人恋しいのかもしれなかった。そんな鈴の頭をポンポンと僕は叩いて、また来るからと言って鈴の家を出るために荷物を持った。 「また期待させやがって、裕介」  僕は帰る時間を過ぎていたので鈴のそんな独り言は聞こえなかった、まずい門限の前に帰らないと母から怒られてしまうと焦っていた。だから僕が鈴の少しずつ張った罠に入りかけていること、そんなことにも全然気がついていなかった。僕と鈴は親友だと思っていた、だから二人でちょっとエッチなこともするけど、それは若いからそうなのだと思っていた。だから、僕が玄関の扉を閉める寸前の鈴の真剣な言葉も聞き逃していた。 「絶対に逃がさねぇ、俺の裕介」

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