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1-07罠から逃げる君を捕まえる
「なぁ、裕介。今日の夕飯は肉でいいか?」
「鈴、その、えっと……」
「なんだよ、何か他に食べたいものがあるのか?」
「いや、食べ物なんかの話じゃなくて……」
「それじゃ、何の話なんだ? 土曜日だぞ、まさか俺ん家に来ないのか?」
「うっ、うん。できればそうしたい」
今日はいつもと変わらないただの土曜日だった、いつもなら鈴の家に泊まりに行く日だ。でも僕はこの前、鈴としたセックスが恥ずかしくて鈴の家に行く気になれなかった。鈴の家にいけば必ずえっちな遊びをするからそれが恥ずかしくて、僕は今週は鈴の家に行くのを止めようとした。鈴は明らかに不機嫌になって僕に何かを言おうとした、でもその前に先生が入ってきて話をはじめた。
”何でだ?”
”……恥ずかしいから”
”セックスの時に好きとか、大好きとか言わせたからか?”
”そうだよ、あれ物凄く恥ずかしいよ”
”それなら今日は言わなくていいから、とにかく俺の家に来い”
”ちょっと僕は冷静になって考えたい、だから今日は行かない”
鈴から携帯にメッセージが入るので、僕も先生に隠れて返事を送った。僕はとにかく冷静になってちょっと僕と鈴との関係を考え直したかった、実は先週の日曜日に自宅に帰ってからずっと考えていた。鈴のことは確かに好きで大好きな親友だ、でもそれをセックスの時に言わされると僕は変な気持ちになった。何かが間違っているような気がしてならなかった、だから放課後も僕は鈴に何か言われる前に、荷物を持って走って自分の家に帰った。
”返事をしろ、裕介”
”今日はセックスしなくてもいいから”
”頼むから、何か言ってくれ”
”二人で考えて解決したい”
”裕介、俺たち親友だろ”
僕が自分の家の部屋に帰っても、鈴からは携帯にメッセージが送られて来た。僕はなんて鈴に返事をしていいか分からなかった、一度でも返事をしてしまったら終わりのような気がしていた。何が終わりなのかは分からなかった、僕は自分の部屋のベッドにもぐりこんで止まらない鈴からのメッセージを見ていた。
”もういい、迎えに行く”
僕は鈴からそのメッセージが送られてきて、自宅にいたら駄目だと分かった。だから慌てていつもの泊まりに使う時のバッグを持って、母親には鈴の家に行くと言って夜の街に飛び出した。とにかく鈴の家から遠ざかりたくて、どこにいるか分からない鈴に見つからないように、夜道を必死に目的地も決めずにひたすらただ走った。
「すいません、今日泊まりたいんですが」
「あのー、十八歳は超えられてますか?」
「はい、これっマイナンバーカードです」
「ありがとうございます、確かに十八歳ですね。それでは、お部屋のキーをお渡しします」
「ありがとうございます」
「こちらこそ、ようこそ。ごゆっくりなさってください」
僕は走り続けて街まで来た、そうして適当に安そうなホテルに入った。僕だってどこにあるのか分からないホテルだ、ここなら鈴だって僕を見つけることができないだろう、そうして僕は冷静になって鈴との関係を考えようとした。そうしてじっくりと考えようとしたその時だった、僕の泊まっている部屋のドアを乱暴に叩く音がした。
「裕介、開けろ!!」
なんで僕の居場所が鈴に分かったのか僕には分からなかった、僕は咄嗟に携帯のメッセージを見た。鈴から山ほどのメッセージが入っていたが、とにかく僕は慌てて”入って来ないで”と鈴にメッセージを送った、すると鈴からは”嫌だ、直接顔を見て話したい”とメッセージが入った。僕は”今は会いたくない”と鈴にメッセージを送った。
”俺のこと嫌いになったのか?”
”鈴の事は好きだよ、大好きだよ”
”じゃあ、どうして会ってくれない?”
”一人で冷静に考えたいんだ”
”二人でだって考えられるさ”
”鈴の顔を見ると、考えがまとまらない”
そうやってしばらくメッセージのやりとりが続いた、とにかく鈴は僕と会って話をしたいと言っていた。でも僕は鈴の顔を見ると駄目だった、それだけで冷静に考えられなくなるのだ、心の中で思い浮かべるだけでも駄目だった。”お願いだから、今日は一人にして”と僕はメッセージを送った、鈴からはしばらく経って”それならこのドアをぶち破る”と返事が来た。それとともに部屋のドアからドガンと尋常でない音がした、それが二度、三度と続いたので本当にドアが壊れると僕は思った。
「鈴、お願いだから、止めて!!」
「よぉ、やっと捕まえたぜ。裕介」
「今日は一人で冷静に考えたいんだよ、鈴!!」
「そうやって冷静に考えたら、親友の俺のことを捨てるんだろ。裕介」
「そんなことはないよ!?」
「いいや、絶対に冷静に考えたら俺は捨てられる。裕介、そんなことはさせない」
そう言うと鈴は僕をベッドに押し倒した、そうして息もできないようなキスを僕は鈴にされた。それだけじゃなくて鈴はコンドームを取り出して、僕のものにはめて強くこすったり、優しく撫でられたりした。僕の弱いところを鈴はよく知っていて、僕のものはすぐに固くなって立ってしまった。鈴は素早く自分のズボンを脱ぐと、僕が止める間もなく鈴のお尻に僕のものを挿入した、そうして腰を動かしながら僕に囁きかけた。
「んん!! ああ!! キツイぜ、なぁ、裕介。俺たち親友だろ。こうやってセックスしたって、それは変わらないだろ」
「やぁ!! 鈴!! これじゃ、セックスじゃなくてレイプだよ!?」
「どうして? 裕介がキスと愛撫だけで興奮したんだ、俺はそれに乗っかっただけさ」
「セッ、セックスしたってもう僕はあんな恥ずかしいことは言わない!!」
「それじゃ、俺が言ってやる。ああっ!! 裕介、好きだ。大好きだよ。はぁ、ああっ!!」
「やっ、嫌だぁ!! 鈴、それは卑怯だ!! ああ、僕の耳元で囁かないで!!」
僕は鈴に『好き』だとか、『大好き』だとか言われて興奮した。ただの親友の『好き』や『大好き』なのに、僕は勘違いしてしまいそうになった。鈴からまるで恋人のように愛されている、そんな馬鹿な考えが僕の頭をよぎったがすぐに消えた。恋人をレイプする奴なんて碌な人間じゃない、鈴は人間関係で問題も多かったが、僕には優しくて一緒にいると心地よい親友だ。そう、鈴はとても大切な親友だ。
「はぁ、裕介。好き、好きだよ。だから動いて、なぁ大好きだから、俺にキスして、ああっ!!」
「鈴!! ちょっと僕に抱き着いて、そう押し倒すよ。大丈夫? キツくない?」
「ああっ!! 裕介!! 好きだ、好き!! だからいっぱい動いて!! 俺のこと捨てないで」
「鈴のことを捨てたりしないよ、ああっ!! 僕も気持ちが良い!! でも、いいのかな?」
「何がだよ、裕介!! 好きだ、裕介!! 何を考えてるか教えて!! あああああっ!!」
「僕たち親友なのに。こんな気持ち良いセックスを、本当にしていいのかな?」
「いいんだよ!!! 理屈じゃなくて体で感じてみろよ!! 俺たちが気持ち良いセックスをして何か悪いか?」
「ううん、そんなことはない。むしろ体の相性はすごく良いと思う。あれっ、僕は何を悩んでいたんだろう」
結局、その日泊まったホテルで、鈴と四回射精するまで僕はセックスをした。僕は何を悩んでいたのか分からなくなってしまった、鈴はそれでいいんだよと言って僕を抱きしめてキスをした。僕は考えるべきことがあったのに分からなくなってしまった、鈴とのセックスという凄い快感にながされて、僕の疑問は消えてなくなってしまっていた。僕はホテルのお風呂を先に使うことにした、鈴が嬉しそうにそれを笑って見てた。
「危ねぇ、もう少しで裕介に逃げられるところだった。裕介の携帯に追跡用アプリをこっそり入れといて良かったぜ」
その後、鈴もお風呂に入ったがベッドは精液でぐしゃぐしゃで使えそうになかった。だから鈴と一緒に鈴の家に帰ることにした、もう深夜になっていたがホテルの清算をして、鈴と一緒なら怖い物はなかったから二人で歩いた。鈴はずっと僕の手を握っていた、僕が離そうとしたらぎゅっと強く握られてしまった。そうして鈴の家に帰りついて、僕たちは鈴のベッドで一緒に眠ることにした、僕は疲れていたのかすぐに眠ってしまった。
「裕介、裕介。早くこの罠から出られなくなれよ、いや絶対に俺がそうしてみせるから」
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