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1-06罠にかかった君からの大好き

「ねぇ、裕介くん。私とつきあってくれない?」 「えっ!? 林さん、それ本気?」 「うん、本気よ。もうすぐ卒業だから、言っておきたかったの」 「うーん、少し考えさせてくれる?」 「ええ、もちろんよ。でもできれば返事は早くね、卒業までできるだけ一緒にいたいから」 「分かった、明日にでも返事するよ」  世の中何が起こるか分からないものである、長いストレートの黒髪に黒い瞳の林沙織(はやしさおり)さんに、放課後の屋上に呼び出されたと思ったら僕は告白された。でも林さんは他のクラスで全然知らない女の子だったから、僕は即座に返事ができなかった。今日、帰りに鈴にも相談してみようと僕は思っていた。そして、僕は鈴の家に向かった。何故か鈴がいなくて、僕は貰っていた合鍵で中に入った。しばらくすると鈴も帰ってきて、晩御飯を作り始めた。 「ねぇ、鈴。相談したいことがあるんだけど……」 「ああ、林沙織のことだろう?」 「えっ、よく分かったね。どうして分かったの?」 「それはなお前に告白した後のあの女に、俺じゃ駄目って聞いたら彼女候補になるってさ」 「ええ!? ちょっと僕は返事をする前にもう失恋したの!?」 「そうなるな、あの女。碌な女じゃねぇぞ、裕介。女を見る目をもてよ」  どうやら僕は告白された林沙織さんに返事をする前に振られたようだ、そういえば鈴が僕の彼女をとっちゃうってことが幼稚園でも、小学生でも、中学生でもあった。だから僕は今回はそんなに衝撃は受けなかった、幼稚園の頃なんかは泣きながら鈴と口喧嘩したものだが、確かに僕と鈴とでは鈴のほうが男性的な魅力があるのだ。そうして僕はふらふらと自分の家に戻り、翌日学校に行って教室で鈴とお喋りしていたら、問題の彼女である林沙織さんがやってきた。 「鈴くん、今夜私の家に泊まらない?」 「ああ、それはお断りだ」 「えっ、でも。昨日、私を彼女候補にしてくれるって!?」 「お前さー、昨日。裕介に告白してたろ」 「そっ、それはもう無かったことで!?」 「俺、二股かける女って嫌い。それじゃあな、二股女」  林沙織さんはクラスの注目の的になった、ええ二股かけてたのとか、二股なんて最低ねとか、俺でも付き合わねぇわとか皆に言われていた。林沙織さんはそれでわっと泣き出して、どこかへと去っていった。うーん、女の子ってやっぱり僕にはよく分からないや、鈴に女を見る目をもてと言われるのもよく分かった。そして、今日は土曜日だったので鈴のところに僕は泊まりにいった。 「裕介、もう大学に行くんだから、彼女はそれから作ったらどうだ?」 「確かにそうだね、一緒の大学に行くんならともかく、そうじゃないなら続かないと思う」 「それと女を見る目を持てよ、その女が本当に好きなのかよく考えて返事しろ」 「よく考えたら僕は女の子を好きになったこともないや、いや待って幼稚園くらいの頃に好きな子がいたような」 「ああ、それ俺。裕介は最初、俺のことを女の子と間違えて告白したんだ」 「えええええ!? あっ、でも言われればそんなことが確かにあったような」  僕が鈴と幼稚園に通いはじめた初日のことだ、その日鈴は鈴のお母さんの悪戯なのか、とっても可愛い女の子のような髪型に変わっていた。僕は友達の鈴だとは気がつかずに、とっても可愛いね、僕とつきあってくれないと鈴に言ったのだった。そうしたら僕に告白された鈴が面白がって、うん、いいよって言ったんだった。翌日にはネタばらしをされたが、もちろん鈴とは口喧嘩をすることになった。 「僕の初めての彼女は鈴だったのか、あの時は可愛い女の子に見える鈴に浮かれて、友達の鈴がいないのにも気がつかないお馬鹿な幼稚園児だった」 「親友がいないことにも気がつかないなんて、お前かなり彼女ができて浮かれてたよな。俺はちゅきって何度もお前に言われたし、ほっぺたにちゅーまでされた」 「あああああ!? 僕の幼稚園時代って黒歴史ばっかりじゃないか!? だからきっとよく覚えていないんだ!!」 「勝手に黒歴史にすんなよ、微笑ましい思い出じゃないか」 「鈴も告白した時に、俺だよって言ってくれれば良かったのに」 「いやだって告白する裕介が可愛くてな、純粋な幼稚園児のキラキラ輝く瞳に逆らえなくて」  鈴はそういって昔の僕を思い出すように遠い目をした、親友の髪型が女の子っぽく変わってたって、まさか告白するとは僕はお馬鹿な幼稚園児だった。鈴は上機嫌であの頃の裕介は可愛かったと、黒歴史を更に詳しく話してくれた。僕は女の子だと思った鈴のほっぺにちゅーしたり、幼稚園の庭に生えている雑草のお花を渡したりしたそうだった。僕は物凄く恥ずかしかった、黒歴史とはここに極まれりといったところだった。 「なぁ、俺をちゅきな裕介くん? 俺はすごーくエッチなことがしたいなぁ」 「もう黒歴史に触れるようなことは止めて、本当にお願いだから勘弁してくれよ、鈴」 「物凄いエッチなことしてくれたら、俺も黒歴史とやらを忘れられるかも」 「もう、なんでもするから鈴のベッドに行こう」 「よっし、なんでもするって言ったな。それを忘れんなよ!!」 「うぅ、幼稚園時代の黒歴史が恥ずかしい」  そうしていつものように鈴のベッドに行って、僕たちはエッチな遊びをすることになった。僕の右手にコンドームをつけて、鈴の下の穴をゆっくりと丁寧にほぐしていった。そうして十分に鈴の方の準備ができたら、僕は正常位で鈴に僕のものを挿入した。鈴は気持ちよさそうに喘ぎながら、僕のものを受け入れていった。 「おい、裕介。今日は俺を抱きながら、『ちゅき』って言えよ」 「ええっ、恥ずかしいよ!!」 「なんでもするって言っただろ、だから俺のことを『ちゅき』じゃなくて『好き』でもいい、そう言いながら抱けよ」 「わっ、分かったよ!?」 「ああっ!! はぁ!! あああ!! 裕介、そこいい!! はあぁぁ!! 気持ち良い!!」 「鈴が好き、好きだよ。ここ気持ち良い? ねぇ、鈴。好きだよ」  僕は鈴のことを好きだと言いながら抱いた、鈴はそれでいつもより興奮しているようで、嬉しそうに僕にキスをしてきた。そうして何度も何度も鈴はいった、僕に好きだって言われただけでいったりしていた。もちろん一回のセックスでは許して貰えなくて、体位を変えて僕たちはお互いに何度も気持ちのいいセックスをした。 「ああっ!! 裕介、もっと言えよ。俺のことが好きだって、そう言えよ。あああっ!!」 「うん、分かった。鈴のことが好き、好きだよ。ああ!! 僕も気持ち良い!! いく!!」 「なんだ裕介、いっちまったのかよ。それじゃ、コンドームを変えてまた入れてくれよ」 「分かった、あと鈴。抱き着いてくるのはいいけど、僕の背中に爪を立てるのはちょっと抑えて」 「はぁ!! また入って!! ああっ!! いい!! んん!! ああ、最高!!」 「鈴が好きだよ、好き、好き。ああっ、気持ち良い!! 鈴のことが好き、大好きだよ!!」  結局四回僕がいくまで鈴とセックスした、鈴は上機嫌で僕に抱き着いてきてキスをした、エロい舌を絡めるような凄いキスだった。鈴も興奮していたが、僕も何故か今日のセックスは興奮した。なにかのピースがぴったりとはまったようなセックスだった、そんな僕に鈴は何度も何度もキスをしてくれた。 「裕介、俺は『好き』って言えって命令したけど、『大好き』と言えって命令してないぜ」 「あっ、ごめん。『好き』って言うのに夢中で間違えたんだ」 「そうか、間違えたのか。残念だな、裕介は親友の俺が『大好き』だと思ったのに」 「え? もちろん鈴のことは『大好き』だよ、大切な僕の親友だ」 「それじゃ、今度からセックスの時もそう言えよ」 「ええ!? それはちょっと恥ずかしくない?」  僕は鈴に本当に好きなら、大好きなら言えるだろと言われた。確かに僕は鈴の親友で彼が好きだし、大好きでもあった。だから今度のセックスからはそう言うことを約束させられた、僕は何だか恋人に言うみたいで恥ずかしくなった、だから鈴の許可をとって浴室に逃げ込んだ。その時に鈴がなんて言ってたかなんて、とても恥ずかしくて聞いていなかった。 「『大好き』か、なんで『大好き』なのか。そろそろ気がついてくれよ、裕介」  僕はお風呂で冷たい水のシャワーを浴びて、頭と体の熱を冷まして出てきた。入れ替わりに鈴がお風呂に入って、僕は自分用の布団を敷いて中に入り込んだ。冷たいシャワーを浴びたのに、まだ何故かドキドキしていた。鈴がしばらくして出てきて、当たり前のように僕の布団に入ってきた。僕はもっと自分の煩い心臓の音が、すぐ傍にいる鈴に聞こえるような気がして、無理やり目を瞑って眠りに落ちた。 「俺の裕介、俺を『愛してる』っ言ってくれよ」

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