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4:ダイヤ帯
ダイヤ帯は地獄だった。
「またチーター!?」
敵からの射線切って逃げてる途中だった。壁越しに索敵モーションは見えなかった。にも関わらず俺の位置がバレッバレで敵が待ち構えていた。キャラの能力とは別に壁を透視する能力があるのだ。いわゆるチート。悪質なプログラム書き換え。
「ごめん、落ちる、逃げて!」
「どわああああ、つらいつらいつらい!」
チーターには他にも種類がある。壁を透視出来るウォールハックはまだ可愛いもので、俺が一番しんどいと思うのはオートエイム。ヤカモレさんがダウンして、俺も走って逃げてるにも関わらずダメージが入る入る、えぐい自動照準でダメージを入れられ続ける。結局俺も死んだ。
「もおお~~~!!」
「くっそ面白いな、このゲーム!」
「そうだなー! 面白いなあ、このクソゲー、最高だなあ!」
ヤカモレさんとやんややんや言い合いながら何とかモチベを保とうとする。3連続チーターに当たって気持ちが萎えそうになっていた。コメント欄も草が生えてるが苦笑いみたいな感じだ。『ついてない』『どんまい』『3連チーターは萎える』とか色々慰めてくれる。
「やっぱ索敵キャラ欲しいな」
ヤカモレさんが味方の構成希望を言った。
「俺やろうか?」
「マキちゃんは切り込み隊長でしょー」
索敵はどちらかというとサポート能力だ。俺みたいな突っ込んでいく近距離タイプは攻撃に特化した能力を持ったキャラが合う。
結局何でも出来るヤカモレさんが使ってるキャラ変えて俺のサポート兼アタッカーみたいな役割を担ってくれた。索敵キャラではない。3人必要なゲームで固定パーティが2人しか居ないから、完全にサポート側に回ったらあと1人次第で攻撃力が足りなくなるからだ。
「やっぱあと一人欲しいよなあ」
ヤカモレさんの呟きにコメント欄では『zh@』『教官まだ?』とリスナーの遠慮のない声が次々に流れていく。俺は何も答えなかった。
ヤカモレさんがキャラ変えして勝ち筋が見えてきた頃、それは起こった。
「……こいつ、やってんな」
ヤカモレさんが先に気付いた。
味方にマッチングした野良がチーターだった。
「最ッ悪!!」
今シーズンは特にチーターが多いと話題だった。マスターランクに上がると手に入る特殊モーションがみんな欲しいのだ。気持ちは分かるが、ずるしてる奴の味方はしたくない。ヤカモレさんもそうだった。その試合は敵チームの前に拾った武器や装備を落としまくって、敵を支援した。
「マキちゃーん、俺やっぱ野良とやるの限界感じるわ」
「……うん」
流石に返事した。この間からやたらと『マキ早く教官と仲直りしろ』といったコメントを見かける。俺がzh@を避けてることがリスナーにも伝わってるらしい。仲直りっつーか、喧嘩もしてないんだけど。
その日の配信後、俺からzh@に「手伝って」と連絡した。zh@からは「分かった」と、一言だけ返ってきた。
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