1 / 2
1. 依存
もうこれで何人目だろう。
まあ、覚えているはずもないか。
皆、体を交 わせて抱き合った仲なのに、彼らのことは何も知りやしない。
出会いはいつもゲイバー。
今日のように前置きで軽い会話をした後、テキトーな場所でテキトーに事を済ませて、それっきり。
名前も連絡先も知らない。
知っていたのは職業と年齢くらい。
彼らとの関係は、お互い使い捨てのセフレだった。
ずっとそんな不貞操な行為で欲を満たしている。
あの人と、別れてからは。
____________________
「…今日も、抱いてくれないんですか…?」
「ごめん…明日も朝から撮影でさ…」
「…俳優の、写真集…」
「そ、超人気な俳優さんだからさ、スケジュールも
詰め詰めなんだよね」
「…いつまでですか…?」
「うーん、遠方まで行く日もあるから…」
「それって、泊りがけってことですか?」
「うん、まだ2週間くらいは先だけど」
「…じゃあ仕事が落ち着いたら、恒雅さんの時間、
全部俺にください」
「…まあ、それはそれとして、スキンシップは毎日
しないとね」
「…それだけで済むといいですけど」
「そう、だけど…」
‘‘優陽に寂しい思いさせたくないんだよね’’
____________________
「大丈夫?どっか痛む?」
「え…あぁ…何ともないですよ」
「ふーん、じゃあ満足できなかった?」
「いえ、むしろスッキリしました」
「ホントに~?」
「ソレ目的なんで、一応人は選んでますから」
「へぇ、見る目あんね」
「それなりに経験積んでるので」
「ははっ、もう彼氏作った方がいいんじゃない?」
「…俺、結構しつこいんで、何でもない人とヤる方が
合ってるんですよ」
「じゃあ、もしに好きになったら?」
「それはないですね」
「なんで言い切れるの?」
「…俺、しつこいんで」
「…なるほどね」
「分かってくれましたか」
「…あ、別に君のことが好きで聞いた訳じゃないよ」
「いや、よく喋る人だなって」
「ははっ…ただの寂しい奴だよ、僕は」
____________________
「じゃあね、こういうのもほどほどにするんだよ」
「…分かってますよ、さようなら」
彼はヒラヒラと手を振って帰っていった。
‘‘もう彼氏作った方がいいんじゃない?’’
きっと普通ならそうする。
寂しいなら、寂しくなくなればいい。
だから、俺はこうした。
少しは寂しくなくなると思った。
新しい出会いすら期待してた。
もう引きずらなくてもよくなるって。
でも、事が済めばまた寂しくなって。
また期待して、また寂しくなって。
その繰り返し。
だけど、それは結局"あの人"が好きだからだって
気付いてからは、何も期待しなくなった。
溜まった欲を発散するために、ただ欲情し続けた。
それでも、その後はいつも変わらず寂しかった。
‘‘寂しい思いさせたくないんだよね’’
「…嘘つき……」
貴方はまだ、俺が他の男に欲情しまくってるコト、知らないんでしょうね。
‘‘まだ’’、ね。
ともだちにシェアしよう!