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1. 依存

もうこれで何人目だろう。 まあ、覚えているはずもないか。 皆、体を(まじ)わせて抱き合った仲なのに、彼らのことは何も知りやしない。 出会いはいつもゲイバー。 今日のように前置きで軽い会話をした後、テキトーな場所でテキトーに事を済ませて、それっきり。 名前も連絡先も知らない。 知っていたのは職業と年齢くらい。 彼らとの関係は、お互い使い捨てのセフレだった。 ずっとそんな不貞操な行為で欲を満たしている。 あの人と、別れてからは。 ____________________ 「…今日も、抱いてくれないんですか…?」 「ごめん…明日も朝から撮影でさ…」 「…俳優の、写真集…」 「そ、超人気な俳優さんだからさ、スケジュールも  詰め詰めなんだよね」 「…いつまでですか…?」 「うーん、遠方まで行く日もあるから…」 「それって、泊りがけってことですか?」 「うん、まだ2週間くらいは先だけど」 「…じゃあ仕事が落ち着いたら、恒雅さんの時間、  全部俺にください」 「…まあ、それはそれとして、スキンシップは毎日  しないとね」 「…それだけで済むといいですけど」 「そう、だけど…」 ‘‘優陽に寂しい思いさせたくないんだよね’’ ____________________ 「大丈夫?どっか痛む?」 「え…あぁ…何ともないですよ」 「ふーん、じゃあ満足できなかった?」 「いえ、むしろスッキリしました」 「ホントに~?」 「ソレ目的なんで、一応人は選んでますから」 「へぇ、見る目あんね」 「それなりに経験積んでるので」 「ははっ、もう彼氏作った方がいいんじゃない?」 「…俺、結構しつこいんで、何でもない人とヤる方が  合ってるんですよ」 「じゃあ、もしに好きになったら?」 「それはないですね」 「なんで言い切れるの?」 「…俺、しつこいんで」 「…なるほどね」 「分かってくれましたか」 「…あ、別に君のことが好きで聞いた訳じゃないよ」 「いや、よく喋る人だなって」 「ははっ…ただの寂しい奴だよ、僕は」 ____________________ 「じゃあね、こういうのもほどほどにするんだよ」 「…分かってますよ、さようなら」 彼はヒラヒラと手を振って帰っていった。 ‘‘もう彼氏作った方がいいんじゃない?’’ きっと普通ならそうする。 寂しいなら、寂しくなくなればいい。 だから、俺はこうした。 少しは寂しくなくなると思った。 新しい出会いすら期待してた。 もう引きずらなくてもよくなるって。 でも、事が済めばまた寂しくなって。 また期待して、また寂しくなって。 その繰り返し。 だけど、それは結局"あの人"が好きだからだって 気付いてからは、何も期待しなくなった。 溜まった欲を発散するために、ただ欲情し続けた。 それでも、その後はいつも変わらず寂しかった。 ‘‘寂しい思いさせたくないんだよね’’ 「…嘘つき……」 貴方はまだ、俺が他の男に欲情しまくってるコト、知らないんでしょうね。 ‘‘まだ’’、ね。

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