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第10話
「アイスおいしかったー!」
「そりゃ、良かった。さ、着いたぞ。」
両側から差し出されるアイスを食べ終わり、やっと目的の場所についた俺達。
テーマパークとかショッピングモールとかによくある総合案内所で、係員のお姉さんに迷子を保護したことを伝える。
ブースの内側に案内され中へ入ると、ポップな雰囲気のソファや、小さい子ども達のためのラグが敷かれている。
たけしはラグの上にあるオモチャへまっしぐら。俺達は案内されるままソファへ腰かけた。
始めに軽く身分の確認をし、迷子を見つけた場所や状況、ここに来るまでのことについて聞かれ、一つづつ話していく。
係員はそれらを書き留めた後、今度は遊んでいるたけしに声をかけた。
自分の名前や母親の名前など、たけしはお姉さんの質問にスラスラと答える。
集まった情報を元に迷子放送が流れると、わずか数分で一人の女性がやってきた。
「猛 !!」
「ママーーーー!!」
だっと駆け出したたけしは、その女性、母親にひしっと抱き着く。
「一人で行っちゃダメだって言ったでしょ!離れちゃダメって……あぁ、無事でよかった!!」
「ママぁぁぁぁ!ごめんなさいぃぃぃぃ!!!!」
目には涙が滲み、離れるものかとばかりに腕に力を籠める二人。そんな感動の再会を邪魔しない様にそっと係員に声をかけ、俺達は総合案内所を出た。
「お母さん、見つかってよかったですね。」
「そうだな。累が見つけてくれたおかげだよ、ありがと。」
「いや、僕は……。」
スマホには父から合流するとメッセージが入り、遅めの昼ご飯をとるためにレストラン街へと向かう。
心ここにあらずなまま、俺に腕を引かれるがまま歩いている累。迷子と親の再会なんてほっこりする出来事のはずだが、どうにも隣の雰囲気は暗い。
なんとなくその心の内がわかる気がする。
きっと累は、見つけてもらえなかったんだろう。
ずっと一人で彷徨っていた。ずっと一人で泣き叫んでいた。ずっと、誰にも見つけてもらえずに。
悲しかったことを忘れさせてあげたい。辛かったことを癒してあげたい。
けど、何をしたらいいのか分からない。何ができるのか分からない。
だから、
「るい。ご飯、何食べたい?」
今日の話をしよう。明日の話をしよう。今日を健やかに過ごせるように、温かな気持ちになれるように。
「ハンバーグ、食べたいです!」
にぱっと笑う累の頭をいつもより少し乱雑に撫でる。
俺に、もっと力があれば、その瞳の澱みも消してあげられたのかもしれないなぁ。
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