「るい！はると！あれ！あれあれ！！！」 「あっこら、暴れるな！」 「えっなに！？どうしたの、たけし君！！？」 「アレ食べたい！！！」 この人数の中から地道に母親を探すよりも、係員に放送してもらった方がいいだろう。 そう思って総合案内所へ向かっている最中、腕の中のたけしが暴れだした。 短い腕で指し示す先にはフードコート。 「ママは？」 「アイス食べたい！」 「…………っはぁー。じゃあ行くか。」 迷子の迷子のたけし君は、お母さんよりも三十一番アイスの店をご所望のようだ。 ショーケースの中、カラフルなそれを嬉しそうに瞳を輝かせているたけし。……と安達。 店員のお姉さんも温かい目つきで二人を見て、試食用のスプーンを差し出してくれる。 何というか、可愛い弟が二人もできた気分だ。 安達に一つ、たけしに一つアイスを買ってやり、四人掛けのテーブルに座る。 「おいしい！」 「おいしいです！！」 「そうかそうか。ってたけし、お前口の周りべたべたじゃねーか。」 小さいわりにスプーンの扱いは上手く、机に零してはいないものの、食べるのはまだ下手なようだ。 紙ナプキンで口元を拭ってやる。 元気よくありがとうと言ったたけしの頭を誉めるように撫でると、くいくいっと袖を引かれた。 「はい！」 「え…？」 振り返った先の安達は満面の笑み。けれど目は全くもって笑っていない。 スプーンを差し出して可愛らしく小首を傾けているが、物凄く圧を感じるのは気のせいなんだろうか…。 ちょっと状況がよく分からなくてぽかんとしていると、ずいずいと手を近づけてきた。 「安達？」 あ、目からハイライト消えた。 「あだち…？違うでしょ先輩。僕の名前は？」 「るいるいるいるい！！」 「良い子ですね！そんな先輩にはい、あーん！！」 「んん？あーーー、ん。」 求められるままに名前を呼び、大人しく口を開けると、不穏な雰囲気は消え去った。 ニコニコとこちらを見ているあだっ…じゃなくて累に美味しいかと聞かれ、美味しいと返す。 すると今度は反対側から「はいっ！」とスプーンが差し出された。 「あーー、ん。」 「あ゛！！！」 「はると、おいしい？」 「おいしいよ、ありがとな。」 子どもはなんでも真似したがるもんなんだよなぁー。 なんてほっこりしていたら、間髪入れずスプーンが反対からやってきて…。 気がついたら延々と二人に餌付けされていた。 自分より遥かに小さい子ども相手に、ムキになっているのは咎めるべきかとも思ったけれど、その顔もすごく可愛いから、許してしまうんだよなぁ…。