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第6話

「今日は抱いてくれないんですか?」 「……………はい?」 つい先程まで感じていた陽気はどこかへ消え、冷たい空気が流れる。 「抱くって、抱きしめるってこと?」 「違います!セックs」 「あーー。え、何?なんて?」 「だから!セッk」 「っごほっごほっ、ごめんもう一回。」 「~~~~っもう!!」 聞きたくない言葉が聞こえてくるので、現実逃避。すると、頬を膨らませた安達に顔を固定される。安達はぐいっとその手を自分の顔へ近づけ……。 「ちゅっ!!」 キス。 何かのスイッチが入ったのか、何度も唇を啄み、舌をねじ込み、数分間のキスが続いた。特に嫌悪感もなく、引き剥がすのも面倒なのでしたいようにさせてやると、満足そうに抱き着いてくる。 「先輩?分かりましたか、僕がしたいこと。」 「あーうん。凄い強制的にだけど理解したよ。」 立っているのも疲れたのでいつもの場所にあぐらをかく。すると当然のようにくぼみに座りこちらを向く安達。 うん、そろそろ慣れそうな自分が怖い。 「でも、男同士でそういうことってできんの?」 「できますよ!っていうか昨日しましたよ?」 何それ、衝撃的。もしかして昨日の記憶が無いのって、忘れたい現実があったからとかじゃ無いよね…。 驚きの連続で疲れた頭を整理する。安達はもうその気が無いのか、抱き着いたり、俺の手で遊んだりしている。っていうか今匂い嗅いでなかった? 思考を落ち着け、とりあえず昨日の記憶が無いことを伝える。 「昨日、起きた後安達がいたことも、一緒にここから出たことも覚えてるんだけどさ、寝る前のこと覚えてないんだよな。」 「…………そうですか。」 抱き着く腕に力が籠る。少し苦しいが、安達にとって忘れられるのはそれ程辛いことだったのだろう。 「でも、なんかわかんないけど、お前と一緒なら寝れたみたい。」 いつもはあんなに眠れないのに、本当に穏やかに眠れた。夢も見ないくらい、深く睡眠したんだ。 俺がそう言うと、安達は腹に埋めていた顔を上げ、ニコニコ笑いながら頬や鼻にキスしてくる。まだ会って間もないが、随分感情表現が豊かなようだ。 すると何かを思いついたのか、何度か小さく頷くと、分かりましたと言った。 「忘れてしまったことは仕方が無いです。」 「ごめんな。」 「だから今からもう一度セックスしましょう?」 は?という疑問の声は安達の口腔に消えていく。驚愕に見開いた目に映ったのは、先程までとは別人のように笑う妖艶な姿。 こうして俺は多分二度目の経験をすることになった。

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