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第60話 父親

「赤ちゃんが出来ました。 クニオが毎日励んでくれたから。」 「サリナが離してくれないんだろ。」  そうだった。人は結婚すると子供が出来るんだった。凄い事だ。 「おめでとう。僕は父親がいないから、、 母さん一人で僕を育てたんだ。」 「離婚したの? 亡くなってはいないよね。まだ若いだろうし。」 「違うの。父親が誰か、わからないって。 たくさんの恋人と同時進行で付き合ってたから、 どの人の子供かわからないって母さんが言ってた。」 「ミト、初めて聞いたぞ。そうなのか。 おふくろさんはぶっ飛んでるなぁ。」 ロジが面白そうに言った。 (ミトの母は『青木みと』の名前でかなりハードなベッド小説の作家だそうだ。) 「それでロジ先生はパパの役もしているのか。」 「この頃、父性が芽生えてきた、なんて事は全くないぞ。冗談じゃない。  ミトは恋人で嫁でかけがえの無い存在だ。 父親じゃセックス出来ないだろう。」 「そうだね。 私はつまらない人妻になりそうでゾッとするわ。 でも、クニオが喜んでいる。」 「そうだよ、愛してる。 サリナは自分が幸せな生活を送れはいいのさ。 赤ちゃんは大歓迎だ。  全部僕がやる。子育ても。」 「この子は刺青だらけの母親をどう思うかな?」 クニオがサリナを抱いてキスしながら, 「全部愛してる。子供に理解してもらえるように愛し合おう。」 「ミトも、自分の子供、欲しくなったかい?」 寂しそうにロジが訊いた。 「いらない。僕がロジに甘えられなくなっちゃうのはいやだ。ロジだけいればいいの,僕は。」  サリナとクニオは仲良く帰って行った。 「ロジ、お膝に乗ってもいい?」 「いつもそんな事聞かないで、乗って来るのに、どうした?」 「僕に父親がいないのは、ダメなのかな。 人間的に何か足りないの?」 「馬鹿なことを言うね。 ミトは素晴らしい私のミトだ。 それだけで何も欠けたところはない。  私の親は、ハワイに住んでる。もう何年も会ってないよ。  仕事が忙しいのもあって一緒に暮らした思い出はほとんど無いんだ。  小さい頃からこの家でお祖父さんと暮らした。 あとは源内先生と梅子さんがいつもそばにいてくれた。血の繋がった家族なんていらないと思っているよ。  私にはミトがいれば何もいらない。 愛してる。」  ロジがキスしてくれた。慈愛のこもったキス。 僕もロジがいれば何もいらない。 「ロジ、ロジ、大好き。」       終わり  第61話 後書き有り

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