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7年前──第24話*

「……ッ!」  呼吸は4秒ほど喉に張り付いて、一気に溢れた。 「え? え、ぇ……え」  なんだこれ、一体何が起こってるんだ。  目を見開き、激痛の発生源を虚ろに探る。蛙のように開かされた両脚の間で、何かがずぼっと尻の穴に突き刺さっていた。  え、と、ただ繰り返す。それが本気で何かわからなかった。 「ン……狭い、ね、ぎゅうぎゅうだ。先端しか入らない」  姫宮の顔を見て、それを見た。  刺さった異物は太くて、浮き出ている血管は赤くて、ドクドクと脈打っていた。そこらへんの美少女よりは可愛らしい姫宮の顔には、不釣り合いなほどの、凶器。  その下の、ふんわりとした根元の下生え。  俺の視線に気付いた姫宮が、照れたように笑った。 「生えてるっていったろ?」  ホントに、生えてた。 「……いたい」  姫宮がさらにのしかかってきて、ミチミチと引き裂かれるような痛みが増した。 「いたい、いたい……いたい!」 「痛い?」 「いた、い……ッ」  しかし姫宮は、「そっか」と興味なさげに俺を一瞥すると、硬直している俺の足を抱えなおしてさらに腰を進めてきた。 「……あ──ッ、かは──ぁう」  圧迫された肺から空気が抜ける。苦しい。 「うまく、……っ、入らないな」  当たり前だ。人の尻穴にそのでかいちんこを突っ込もうだなんて、正気の沙汰じゃない。 「やぁっ、むり、むりッ……いれん、な……抜いて、──ぬけ、よぅっ」 「どうして?」  どうしてって。 「は、いんないぃ」 「入るよ」 「はいらない! そ、そんな、お、オトナみたいなの、入んない……ッ!」 「ふふ、オトナって。僕はまだ子どもだよ?」 「ぁ、あ、やだぁあっ……!」  子どもはこんなことしない! 「それに、入れないとセックスできないんだよ?」 「せ、……」  せっくすは、知ってる。男と女のエッチな行為。でも、それを俺と姫宮でする意味がわからない。だって俺は男なのに──あ、違う、俺Ωだ。  Ωはαと、せっくすできるんだ。だからΩはαに酷いことされて、赤ん坊が生まれたり、しゃかい問題になっていて……はっとする。そうだ赤ちゃん。 「……せっくす、しなくていい」 「なんで」 「だってせっくすしたら、あ、赤ちゃんできちまうだろ……」 「うん、そうだね」  ぽかん。口が半開きになる。 「橘」  姫宮が舌なめずりをした。今にも唾液が零れそうなほど、その唇は濡れている。そしてその唇と目尻が、ゆっくりと弧を描いて。 「僕と赤ちゃん、作ろうね?」  あまりにも禍々しい笑みに、ぞっとした。  目の前の少年は、知らない生き物だった。爛々と光る双眸は、鋭い牙みたいだった。まるで、獲物を仕留めんとしている獣みたいな。  これが、αか。  今から俺は、こんなαにめちゃくちゃに食い荒らされるのか。 「あ……ぁあァああ! 透貴ッ」  見ないようにしていた恐怖がついに爆発した。  貫かれている痛みも忘れて、がむしゃらに暴れる。 「いやだぁあ、助けて透貴、ときぃ──ッァ゛」  まずは右頬で弾けた破裂音に、視界がぐわんぐわんと震える。 「ねえ、透貴って誰?」 「……、ひ……う゛ッ」  え、俺いま殴られた?  姫宮に殴られた?

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