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7年前──第23話*
「ふふ、ぽかんってしてる。わかる? 今君空イキしたんだよ」
「から、い、き……?」
「そう。えっちだね──ほら、舐めて」
「ふぐ」
まだ息も整っていないというのに指を口に突っ込まれ、くちゅくちゅとかき回された。おえ、と嘔吐く。いやいやと首を振れば、薄く笑った姫宮に顎をがっと掴まれ首の付け根を圧迫された。
「舐めろよ、二度は言わない」
「……ッ」
言うことを聞かないとこのまま喉奥まで突っ込むぞ。そんな言葉を雄弁に語る濡れ羽色の瞳に、逆らったらマズイと脳は判断した。
「ん、はア……ふ、んむ……」
こわごわと、美味しくもない指に舌を這わせる。
姫宮の機嫌を損ねないようちゅぱちゅぱとしゃぶり続け、強制的に開かされている顎が痛くなってきた頃。ようやく、ちゅぽんと引き抜かれた。
「は、ぁ……けほ、けふっ」
咳き込んでいるとブリーフを足首まで脱がされた。
そして突然ひきつるような痛みを感じて、慌てて視線を下げる。
「ひ、ァ……い、たァ!」
「すごいや。ちょっと広げただけなのに、もう溢れてくる」
くぷっと指を埋め込まれたそこは、とんでもない場所だった。
「やっ……き、きたねぇ!」
「大丈夫だよ、もう君の中、迎え入れる準備も万端だから」
「どぉ、いう……ぁっ、ンん、ぅ、くぅ、い、たい、ぃ……っ」
「我慢して? ここを柔らかくしないと、後で苦しいのは君だから」
わけもわからぬまま、突き入れられた指はどんどん増やされていった。内壁をぐりぐりほじられるたび痛みは増し、しかしぷちゅぷちゅと水っぽい音も増していった。
「すごい音だね。わかる? 橘……君の奥にある子宮から、たっぷり蜜が零れてきてるんだよ」
「し、きゅ……ぅ?」
(なに言ってんだこいつ。しきゅーとか、それ女にしかねーだろ……あ、そっか。俺、隠れΩだから……でもなんでこいつ、俺のケツの穴、ほじくって……)
「もういいかな。可愛がってあげるから、力、抜いててね……」
ちゅぽん、と後孔を弄っていた指が引き抜かれ、ころんと後ろに転がされた。膝小僧をゆるりと撫でられ、腿にほっそりとした指が食い込んできた。
ぐいっと押し開かされ、両足を姫宮の肩に乗せられる。
体がネコのように柔らかい俺でも、この体勢はちょっと苦しい。天井が揺れている。
頭の中がぽーっとして、ギラギラ血走った姫宮の目をただ見上げていた。
(そうだ……透貴)
今更思い出したのは、足首に引っ掛かって揺れているパンツに、『たちばなとあ』と書かれてあったからだ。大好きな兄の字だ。
臀部の割れ目に、ぬるぬるとした何かを擦り付けられる。むずがゆさに腰をくねらせた。
(透貴、なにしてんのかなぁ)
仕事中かな。いま、俺が姫宮にパンツに顔突っ込まれてすうはあ吸われたり、ちんこ食われてしゃぶられたり、ケツの穴いじられてることなんて知らないんだろうな。
服も、破かれたんだっけ。また危ないことしてって、怒られるかなぁ。
そういえば、今夜はハンバーグですよって言ってた。俺の、大好物。
足りなかったら、夜に冷やし中華も作ってくれるって。
あ、腹減ってきた。観たいアニメも始まっちゃう。後からネット配信されたやつ観るの好きじゃねーんだよな、やっぱりテレビで、透貴とご飯食べながら観たい。
あと透貴とデビハンやりたい。
早く帰りたいな。あとどれくらいで帰れるんだろう。あれ、つーか今普通に帰ればよくね? そうじゃん、うん帰ろう。学校まで透貴に迎えに来てもらおう、そうしよう。
起き上がろうとしたら、急にお尻が痛くなった。
「橘、動かないで。うまく入らないから」
「……な、に、なぁ、に」
入らないって、何がかな。ここまできても、やっぱり思考はぶつ切れていた。にゅぷ、とあり得ない場所が大きく押し広げられる感覚も、ガラス一枚隔てられた別の世界の出来事みたいで。
そっか、ここにいるのは自分じゃないんだ。そんなことすらも、考えて。
「いれるよ」
ぬるい現実逃避は、ずぶぶっと押し入ってきた灼熱に消し飛んだ。
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