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狼の群れ──第53話

「それにねぇ、実は俺らのお家って結構お金持ちなんですよ」 「そうそう。だいたいのことは金でなんとかできるから、捕まっちゃうかもとか気にしなくていーよ」 「動画は?」 「あ、撮る撮る。俺最後でいいわ」 「精液まみれでぐっちゃぐちゃになった孔好きだもんな~、ひろぽんはさ」 「やっ……めろ、……ッくそ」  四人分の手が、はだけた浴衣の下を這いまわる。  誰かに胸を痛いぐらいにもまれ、乳首をキツくつままれた瞬間、ぴりりっと電流のようなものが走って腰が上下に跳ねた。 「ひぁ……!」 「お、効いてる効いてる。じゃあこれはどーかな……?」 「や、ぁ……っ、んぅ」  「せーの」と掛け声を合わせた男たちに浴衣の前合わせ部分を横に引っ張られ、露わになった両胸の先をぴんと爪で弾かれた。  たったそれだけで、嚙み締めていたはずの歯の隙間から甘い声が漏れてしまった。 「ぁ……ん、ぁ、っ……ぁあっ」  指でつままれ、くにくにと弄られるともう目も開けていられない。  くてんと頭を下げて喘ぐと、男たちが、ごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。 「……へぇ、喘ぎ声はそこそこいいじゃん」 「な、あんま期待してなかったけどエロ……」 「そっか? 俺タイプじゃねぇわ。もうちょい女のコっぽいほうがいい」 「じゃあおまえ突っ込むのやめる?」 「いや使うし出すけど」 「使うっておまえな~、透愛ちゃんはオナホじゃねーんだぞ?」 「はっ、使い込めば顔も雌になんだろ」 「じゃ、もっと女の子みたいにあんあん言ってみようか透愛ちゃん……ほらほら」 「……ッひゃ、ぁ、く」  裾をめくられ、下着にずぼっと何人かの手が入ってきた。  まだまだ芯を持っていない陰茎と、その下にあるふぐりをめちゃくちゃに揉み扱かされる。乱暴な手つきで痛いくらいなのに、ぞくぞくと腰の後ろから快感がせり上がってきて腰が揺れてしまった。  腰が揺れてしまった事実に、愕然とする。 「腰揺れてんね、きもちーの? 透愛ちゃん」 「はは、やらし~、やぁっとΩらしくなってきたじゃん」  ──嫌だ!  動画を撮るといった男の手が離れたスキを見て、思い切り身体を捻る。一瞬だけ緩まった拘束。唯一引っこ抜けそうな右手を力いっぱい横に振り切り、手のひらで握りしめていた土を男たちにかける。 「おわっ」  ついでに、股間を揉み扱いてくる右側の男の頬に爪を引っかけてやった。  赤い線が、男の頬から垂れる。 「う~わなに、土口入ったんだけど……最っ悪」 「ってぇな、猫みてえに引っ掻いてくんじゃねえよ!」 「いい加減おとなしくしろや!」 「ぐっ……!」  感情的になった男たちに頭を掴まれ地面に押さえつけられて、ついに硬く結んでいた帯まで抜き取られてしまった。  次に肌襦袢を暴かれ、そしてステテコも引き抜かれ、もう俺の身体を守るものはパンツ一枚のみになってしまった。 「く……」 「うわ、身体うっす」 「肌白くね?」 「はは、こうして脱がしてみるとちゃんとΩだわ」 「あ、一番手だれ?」 「ぜって~俺、土ひっかけられた上に頬引っ掻かれたからムカつく。慣らしてやんねー」 「んじゃ、輪姦タイム始まりまーす。うぇーいちゅっちゅ」  撮影担当の男が自分からスマホを覗き込んで、指を折り曲げてみせた。動画投稿アプリなどで見たことがある、今の若者の間で流行っているポーズだ。  その間にも、がっちりと四肢を押さえ付けられてパンツすらもずり下げられてしまった。  まだかろうじて片足に引っかかってはいるが、無理矢理足を開脚させられ、萎れきった陰茎が4人の男たちの眼前に露わになってしまう。  あまりの羞恥にぶんと頭を振る。 「み、るな……っ」 「……へえ」 「こっちはまぁ普通だな。小さくもなくでかくもなく」 「えーちょい萎え、サクランボみたいにちっちゃいのがいい」 「このショタコンめ。だからおまえはどっかのガキトイレにでも連れ込んでヤッてこいよ」 「あの子がΩだって確証持ててたらな~もったいね」  あの子とはもしかして──悠真の、ことか? (あんな子どもまで、そういう対象かよ……!)  身の毛もよだつ思考回路だ。  戦慄すると同時に、よかったと思った。あの時助けに入ることができてよかった。  俺でよかった。よかったんだ。 「なな、カメラもっと寄って」  仲間の指示のもと、男のスマホが股の間にぐいっと近づけられた。 「実況しまーす、この微妙なちんぽで彼女に突っ込んでへこへこ腰振ってるみたいでぇす」 「生意気、なにが『俺も顔覚えたわ』だよ」 「α様に楯突きやがって、Ωのクソがよ。お仕置き確定ね~お前」  カチャカチャとベルトを外しながら、男がのしかかってきた。下げられたズボンから出てきた男性器は、姫宮のものと大きさも色もそう変わらない。  それなのに、ガタガタと身体が震えて止まらなかった。  もう、「ふざけんな」なんて罵声すら浴びせられない。  ただ「やめて」と、弱々しくて冷たい呼吸のみが、気管を行き来する。  しっかりそそり立った陰茎の根本を持ち上げた男が、後孔にそれを押し当ててきた。  ──ぷちゅり。 「ッ……」  ぞわっと、血の気が一気に引いた。 「おお」 「なになに」 「すげ。この子先っぽけっこー吸い付くわ」  まだ、挿入されてはいない。ただし時間の問題だろう。  具合を楽しむかのように、窄まった入口にくちゅくちゅと陰茎の先を擦り付けられる。  男たちが一斉に、俺の股の間を覗き込んできた。 「……ッ」 「マジかよ糸引いてる。やば」 「胸弄ってちんこ揉んでやっただけで相当濡れてんじゃん」 「どんな感触?」 「んー」  俺に股間を押し付けてきている男が、ぐるりと腰を回した。  ぴとりとくっつけられた陰茎で、ぐにゅぐにゅと右に左に軽く押し広げられて、腰が引けた。 「結構使いこまれる感じすんなぁ、この穴」 「え、なになに、もしや彼女にこっちも開発されてんの? 透愛ちゃん変態じゃん」 「や、めて」 「あは、やめてぇだって。かーわい」 「ほらほら、逃げんなって」  ずりあがった腰を、4人の男たちの手で再び元の位置に戻された。 「──ひ」  本格的に、首筋を誰かの舌が這いまわる。性欲という絶望的な色を孕んだ目という目が、俺をいやらしく見下ろしている。  今まさに俺の中に入ってこようとしている男が、「その顔いいな、そそるわ」と舌で唇を舐めた。  愉しくて愉しくてたまらないとでもいうように。  気持ち悪い、気持ち悪い──気持ち悪い!

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