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キレイな人──第162話*

   橘を見ているのは僕と月しかいない。  その月さえも僕の頭で覆い隠してしまえば、橘は完全に僕だけのモノになる。  今だけは、この人は僕のだ。誰にもあげない。  *  廃神社の中で、するりと引き抜いた帯を遠くに放る。  橘の視線が、不安そうに帯を追いかけた。  大丈夫だからと、震える目尻に一度唇を押し付けて、橘があの男どもに触られたと気にしている部分を、丹念に、丁寧に舐める。  すると、次第に橘の強張っていた身体も弛緩していった。  同時にすぐに上がり始める、これから与えられる快感を期待するような、掠れた声。  僕のじっくりとした愛撫に合わせて、橘は徐々に徐々に、板をかかとで擦って両脚を開いてくれた。  浴衣の合わせを左右にずらし、現れた細くしなやかな足にそっと手を添える。  ぴくんと、橘の腰が疼いた。  柔らかでほどよい弾力の太ももを辿り、下着をずらし、行きついた窄まりをくり、と押しつぶす。 『ン……』 「痛い?」  橘がきゅっと唇を引き結んで、恥ずかしそうにふるふると首を振った。言葉通り痛くはないのだろう。だって、指の第一関節も、吸い寄せられるかのようにくちゅん……と入ってしまった。  柔らかくなるまで、唇と指と舌で時間をかけてほぐそうと思っていたのに。  Ω性の人間として、橘は発情しているわけではない。けれども橘の中のうるおいは十分で、既に溢れた蜜でしとどに濡れていた。  僕の口の中も、お預けを喰らった犬のように涎が溜まる。  早くここに入りたい。この男のありとあらゆる奥を突いて、心臓の下まで僕でいっぱいにしたい。まだ第二性にも、何にも乱されていない素のままの橘を喰らいたい、繋がりたい。  今から、それができるなんて。  本格的に、橘の下着を脱がしていく。  彼も、そろそろと腰を持ち上げて脱がしやすいよう協力してくれた。  ことセックスに関しては、強情を張るところのある彼にしては本当に珍しい。  片足に下着をひっかけた状態で、橘のいいところに上手く当たるよう配慮しながら、指でたっぷりとほぐしていく。  長い指で、二本目、三本目と、ずいぶんとへこみやすい襞の一筋一筋をぬらぬらと擦り上げる。  くぷ、と横に押し広げて、指の腹でこすこすと入口の裏を撫でる。  指を縦に挿入して、くぷくぷと膣奥と内壁から溢れる蜜を、かき回す。  第一関節の根本までを埋め込んだ手のひらを上に向けて、マッサージをする感覚で押し込みながら、バラバラにかきまわす。  くちくちと緩かった水音が、ぐちゃぐちゃと泡を立てて弾けるようになるまで、そう時間はかからなかった。 『ぁ……ぁン、ぅん……ッ』  時折、ぴくぴくと左右に跳ねる足をやんわりと押さえてやれば、橘は指から与えられる快感を発散したいがためにか、小ぶりな尻を小刻みに揺らし始めた。  手のひらにすっぽりとはまるぐらいの桃のように可愛いお尻が、右に、左に、上に、下に、くねくねと、僕の愛撫に合わせて動いている。  橘の股の間で上を向いて斜めにそそり立っている陰茎までもが、たらたら蜜を零しながらぴくんぴくんと、風にそよぐ花のように揺れている。  ──それはあまりにも煽情的な光景だった。  橘の性器は、長さも太さも形も色も、全てがキレイだと、思う。大きさは一般的……平均かもしれないけれど、反り方も堂々としている。   『な、ぁ、ひめ……み、や』 「……うん?」  まずい、涎が垂れた。  橘にバレないように拭い、ごくりと、それでも出続けている唾を飲み込む。 『も、い……から、お、おと、変になって、る……から』 「まだだよ」  このくぱくぱと開閉している鈴口に、大きく口を開けてむしゃぶりつきたい。根本まで一気にほおばって、吸い付いて、じゅうじゅう啜りながら口の中でめちゃくちゃに舐めまわしたい。  橘の陰茎のその下では、膨れた果実みたいな双丘が、風船のように揺れている。  大きさも、ふくふくしていて可愛らしい。シワのない、みずみずしささえ感じる皮を指で伸ばして、舌で舐って、頬ずりしたい。  感度のいい橘のことだ、きっと可愛い声で鳴いてくれる。  でも今、そういうのをされるのは嫌だろう。 『いい、って、もう……だいじょ、うぁ……っ』 「まだ……まだだ」  もう少しここから、へにょへにょと髪を振り乱す君を見ていたい。  ヒートでなく、僕に乱れる君が見たい。  橘が身をよじるたび、縦に細い彼のヘソにどんどんと汗がたまっていく。もう片方の手で入口を広げ、ぐぽっと隙間から親指までもを入れた瞬間、『ひゃ、ぁ』と橘が後頭部を床に擦り付けた。  瞬間的に腹に力を入れてしまったらしく、ぶちゅちゅ……っと空気を含む音が零れて、蜜が散った。 『……~~っ、め、みや……っも、いい、ってぇ』  ついに羞恥心に負けた橘に、ぐい、と強めに浴衣の袖を引かれて止められてしまった。仕方がないが、これ以上しつこくしてやっぱりやらないと言われたら僕が辛い。  最後のあがきとして、橘の中からゆっくりと、ねっとりと、一本ずつ指を抜き取る。 『ふ……う、ゥ、んっ……ン~~ッ……!』  ずる、ぬる、ちゅぽ……と、てろてろに濡れた指の先に、新鮮で透明な蜜液が引っかかって垂れた。指に付着したそれをくちゅくちゅと擦ってみせると、思いのほかねばついていた。  粘度が濃い。膣口から溢れたものも混じっている。橘が興奮してる証拠だ。  橘がうぅ……と唸り、腕で顔を隠してしまった。はふはふと赤い唇でか細く息を繰り返しながら、僕に窄まりぐちゃぐちゃにされて耳まで真っ赤だ。  恍惚と、目を細める。  ああ、可愛い。  橘、愛らしい。  火照ったこの身体のどこもかしこもが、ただ愛おしい。  

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