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第25話
今までの価値観が覆される言葉の数々に圭は混乱した。
圭は頭の中の整理が追いつかず、時雨へまだ下賜するような言葉を口にする。
「だ……、だけど、時雨は俺がいなきゃ幸せになれないだろ?」
「君に卑下されることがどうして僕の幸せになるの?」
「オメガは発情期があるだろ!」
「それに抗えないのはアルファだって同じじゃないか!僕達オメガのフェロモンに耐えられないくせ‼︎今だって僕を抱きたいのは君じゃないか!」
「……っ!」
「君はアルファだ。そして、僕はオメガ。互いに違う長所と短所があって、それらはとても厄介でそして……、とてもかけがえのないものだ」
どちらが優れているのではなく、どちらも優れていて、どちらも優れていないのだと時雨は訴えた。
その訴えに圭は言葉が出なくて、視線を落とす。
「君と僕じゃ価値観が違うんだよ。どうしたって噛み合わない……」
「………それなら、どうしたらいいんだ?」
「関わらないのがベストだろ?」
時雨はふらふらしながらも身支度を整える為に震える手でベッドの下に脱ぎ捨てられた衣服を身に付けていった。
そんな時雨を圭は呆然と見つめる。
時雨の出す答えに圭はどうしても頷けずにいた。
納得出来なくて、途方に暮れる。
今まで自分が一番と思っていた常識が覆された。
いつもならこんな事案、鼻で笑っていただろう。
こんな戯言いわれても響かなかった。
だけど……
時雨に……、この男に言われると心と思考が戸惑いを感じた。
「好きだ……」
考えるより先に圭は声を上げた。自分の前から去ろうとする時雨へ躊躇いながも手を差し出し、拒絶される恐怖に心を萎縮させる。
「好きなんだ」
諦められない
「………俺が悪かった」
絶対に諦められない
「なんでもする……」
だから……
だから……
「俺と番になってください」
ハッキリとした自分のなかの感覚と想いを圭は正確に正直に時雨の手を握りしめながら懇願した。
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