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第24話
「時雨は本当に駆け引き上手だな」
「え……?」
溜め息混じりに責めるような声色が耳を打ち、時雨は圭を見上げた。
「有利な条件で俺と繋がりたいんだろ?言えよ。その条件で手を打ってやるから」
まるで罵るかのような口調で言って退ける圭に時雨はグッと奥歯を噛み締めた。
「金?地位?それとも今後、俺に愛人を作るなって体裁求めてる?」
何でも聞いてやるからさっさと身体を開けと言わんばかりの圭に時雨は怒鳴り声を上げた。
「君とは絶対に番になりたくないっ!」
予想になかった時雨からの言葉に圭は驚きで口を閉ざした。
「結婚だってお断りだっ!例えここで犯されても絶対に君を好きにならない!」
時雨は大きな声で宣言すると、震える身体をなんとか起き上がらせ、圭の体を弱い力でも押し退けた。
熱く燻る身体に意識を持っていかれそうになるなか、意地でそれらを押し込める。
「待てよ、時雨。俺が好きだって言ってるだぞ?それにこんなに折れてるんだ。いい加減素直になれよ」
一体何が気に食わないのか分からないと苛立ったように掌で前髪を掻き上げ、圭は嫌そうに吐き捨てた。
そんな姿を真っ直ぐ見据え、時雨は静かに口を開いた。
「どうして君の方が偉いの?」
「え……?」
「どうして僕は番にしてもらう立場なの?僕は君のこと好きじゃない。君が僕に惚れてるのにどうして僕の方が立場が弱いの?」
凛とした声で質問を繰り出す時雨に圭は焦ったように答えた。
「だって、時雨はオメガだろ?俺はアルファ……」
「オメガじゃダメなの?オメガはアルファの奴隷なの?僕達は同等にはなれなくて……、オメガはいつもアルファの顔色を伺って下の立場でいなきゃいけないの?」
圭の言葉を大きな声で遮り、時雨は堰を切ったように続けた。
「僕はオメガだけど君と同じ人間で、オメガの性がアルファに劣るなんて思ってない!」
涙が溜まる小豆色の瞳で睨みつけ、己の意見を真っ直ぐ伝えてくる時雨に圭は息を止めた。
弱く美しいオメガ
アルファの庇護下にて幸せを手にする生き物
オメガを幸せにできるのはアルファである自分だけだと信じて疑うことなく生きてきた圭は時雨の言葉にとてつもない衝撃を受けた。
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