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プロローグ

   プロローグ  パチンッ、もしそのとき感じた音を言葉にして例えるなら、静電気のようで、それから炭酸が喉を落ちていくようだったとも思う。  繋いだ手をぐっと強く握られた瞬間、指先から弾ける衝撃。  途端、ぐらりとひどいめまいと同時にはち切れそうなほど膨大な記憶が頭の中に流れ込んでくる。  反射的に引っ込めようとした手がびくともしないのは、流れた微量の電流が悪さをしているのではまったくなく、目の前の男が握って離さないからだ。 「海」  音が、カイを繋ぐ。  カイはこの男のことを知らない――はずだった。 「せ、お……っ」  でも、自分の手を痛いほどに掴んで離さない男の名前を、カイはずっと前から知っている。

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