1 / 6
第1話
「新入生の皆さん、おはようございます」
桜舞う、4月。
僕、菱本琉生 は無事高校に進学した。
親の海外転勤が決まったのが中3の夏。
これから地獄の受験勉強期間に突入するんだとばかり思っていた僕の決意は、
『いつ戻れるかも分からない慣れない土地へわざわざ来る必要もないだろう』
という両親の気遣いにより、私立の全寮制男子校への推薦枠を勝ち取ることで幕を閉じた。
「これから1年、このクラスの担任を受け持ちます。藍沢凛太郎 、担当は英語です。学年主任でもありますので、どうぞよろしく」
「⋯⋯なぁ、あの先生胡散臭くね?」
「お前が何言ってんの」
偶然にも同じクラス、隣の席になった幼馴染の御影陽 は、担任にバレないようにコソコソと僕にそう耳打ちしてくるから思わず苦笑してしまった。
陽とは幼稚園から家族ぐるみの付き合いで、本当は高校も公立を一緒に受験する予定だった。
でも、僕の事情が変わったことを伝えると、あっさり進路変更してきたから驚いたよなぁ。
ちなみに陽はサッカーの推薦枠。
運動部も強いらしいから楽しみにしてたな。
「あぁ、言い忘れてました。サッカー部の顧問なのでよろしくお願いしますね?御影陽くん」
「⋯⋯へ?」
地獄耳じゃん。
頑張れ、陽。
ともだちにシェアしよう!