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第2話
「寮は棟まで別なのかよぉ⋯⋯」
「残念。暇なときは電話しようよ」
「昼休みもぜってぇ一緒な?分かった?」
「ふふ、はいはい」
初日は午前中に入学式とクラスでの軽い自己紹介をして、昼過ぎには各自の寮へ戻るよう説明された。
どうやら、寮は卒業までの3年間変わらないらしく、寮生との親睦会があるそうなのだ。
『毎年各々の寮で様々な歓迎会が開かれるのですが、案外面白いものですよ。楽しんできなさい』
と藍沢先生が頬を緩めたのが印象的だった。
「お、来た来た。1年生」
寮の振り分けは入学前に受け取っていたし、早い人なら3月中旬には入寮する人もいるみたいだけど、僕は昨日入ったばかりで顔見知りもいない。
ゾロゾロと寮へ入っていく集団の後ろに着いていきながら、出入口付近で僕達に手を振っている2人の男子生徒が誰なのかよく分からなかった。
「お疲れ様。そのままロビーに向かってね」
新入生一人一人に声をかけている男子生徒は、とても優しい雰囲気の人だった。
スラッと伸びた背に、おそらく肩辺りまでありそうな黒髪を緩く結び、制服もダボッとした着こなしをしているが、それが彼の左目の下にあるホクロともよく似合っているように思えて不思議だった。
「⋯⋯ふぁ」
「こら。欠伸しないの」
「かえって「だめ」⋯⋯」
そんな彼の隣で眠そうに欠伸を零した男子生徒は、彼よりも背が高く、漆黒に近い黒髪を怠そうにかきあげ、目を逸らす。
──あ、なんか、凄い甘い匂い?
ほとんど反射だった。
彼が目を逸らした辺りで、僕が目の前を通る。
ただそれだけなのに。
「ッ」
目が合って一瞬、息が止まった。
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