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第3話
「改めまして、寮長の浜辺夕貴 です。こっちは副寮長の篠原叶芽 。今日は入学式本当にお疲れ様。明日からの高校生活に花が咲くよう、僕らも全力でサポートします。よろしくね」
歓迎会、という名のプチ立食パーティーが始まった。
僕も数人と言葉を交わしたり、親睦を深めていく中で、やっぱりあの二人の事が気になってしまう。
新入生を出迎えてくれた二人の内、髪を結んでいた方が寮長の浜辺先輩で、もう一人の方が副寮長の篠原先輩。
二人は2年生で幼稚園からの腐れ縁だと言っていた。
僕と陽みたいだなと思ったのもそうだけど、なんでだろう。
あの二人は雰囲気が違う気がするんだよなぁ。
「なんだお前。サラダしか食べないのか?」
と、ボンヤリしていたのがいけなかった。
不意に前方に現れた人影を見上げると、そこにいたのは青いネクタイをした浜辺先輩達と同じ学年、黒髪短髪のガタイのいい生徒が1人。
「えっ、あ、すみません」
「唐揚げは美味いぞ。嫌いなら無理強いはしないが」
「いえ!食べます」
「そうか」
途端、嬉しそうに彼が笑う。
いや、少し目元が緩んだだけだけど。
それが何だが意外で呆けている間に、彼の皿から唐揚げが一つ僕の皿に乗せられてしまう。
いやいやいや、とあたふたする俺を他所に、彼はもう一度僕の皿から唐揚げを摘み上げ、あろう事かそのまま僕の口へと突っ込んできたではないか。
「んぐっ」
「どうだ」
どうだじゃないだろうっ、なんて言えるはずもなく。
もぐもぐと口いっぱいの唐揚げを頬張る僕と、それを見つめる上級生のよく分からない図が完成してしまった。
「⋯⋯お、美味しいです」
「ならよかった。残りも食ってくれ」
「えっ、こんなには無理ですよ!」
「それもそうか。──夕貴、手伝ってやれ」
え、と思うのも束の間。
くるりと踵を返した先輩が向けた視線の先にいた浜辺先輩が、
「なに〜って、あらら。またやってんの」
なんてヘラヘラ笑いながらこちらにやってきてしまったじゃないか。篠原先輩も一緒に。
「俺は仕事に戻る」
「それはいいけど、自己紹介くらいした?」
「⋯⋯⋯⋯御子柴秀 だ」
「あぁもう。ほんとごめんねぇ」
「いえ!全然、大丈夫です。菱本琉生です。よろしくお願いします」
「ああ、よろしく。これから先、何かあったら俺に言え。これでも生徒会副会長だからな」
そう言ってわざとらしく肩を竦めてみせた御子柴先輩は、篠原先輩にも挨拶をすると嵐のようにその場を去っていった。
この気まずい雰囲気の僕達を残して。
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