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第4話

「えーっと、菱本くんだっけ?」 「ぁ、はいっ」 「はは。そんな畏まらなくていいよ」 そう言って微笑んでくれた浜辺先輩のおかげで幾分か肩の力が抜けた。 「同級生と少しは話せた?」 「はい。同室の子とも話せて、明日一緒に登校することになりました」 「それはいいね。うちの学園って校則も寮の規則も割とゆるいし、皆優しいから沢山頼れる人見つけなね?」 「はい。ありがとうございます」 「あ、でも極稀に変な奴もいるから気をつけて。一昨年までは学園自体が荒れてたから、その名残りがまだあるみたいなんだよねぇ」 「わ、かりました⋯⋯」 色々と他にも聞きたいことはあったが、この短時間で分かったことが一つだけあった。 浜辺先輩は、自由人。 入学したての新入生をビビらせるようなこと言ったかと思ったら、「じゃあね」ってあっさりその場を後にしてしまうとことか。 他の新入生の輪に入っていったと思ったら、また別の輪に入って3年生の先輩達と親しげに話してたりして。 純粋に、凄いなぁと。 僕が、御子柴先輩に積み上げられた唐揚げを頬張りながら思ったときである。 「それちょうだい」 驚くのも束の間、隣から伸びた手がそれを皿ごと奪い取ってしまった。 僕が唖然としていると、当の本人は何食わぬ顔で唐揚げを一つつまみ、こう続ける。 「そうビビんなくても平気だよ」 「えっ」 「風紀委員がいるし、生徒会も見回りしてる」 「そう、なんですね。よかったです」 「ヤッてる奴はいるけど」 「やってる?」 「セックス」 「⋯⋯⋯⋯他校の生徒とかですよね?」 「何言ってんの。連れ込み禁止だよ」 いや、確かにそうです。 この学園、外泊とかは緩いけど、親族でも入寮許可証貰って身分証確認までしないと入れませんよね。絶対。 なら、尚更、分からないんですが? 「生徒同士でヤッてんの」 「⋯⋯はい?」 「あ、たまに教師もね。稀だけど」 「⋯⋯はい」 「興味ないならいいけど、きみみたいな子を狙うのが変な奴。だいぶ減ったけどね」 「え、っと」 「気をつけて。偶然居合わせたら助けるよ」 「ありがとうございます?」 「気が向いたらね」 「え」 じゃあお疲れ。 それだけ言って、皿ごと遠ざかっていく先輩の背を眺めながら僕は思う。 あの二人、幼馴染だわ。

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