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「んっ、んぅっ、んん」  唇が柔らかい。  唾液が絡み合って、舌が歯列をなぞる。  熱い。熱いけど、甘くて、とろとろしてくる。  ちゅ、ちゅ、と吸いながら、大飛は円の口内を舌で犯していく。  一つ一つ、確かめるように味わうように絡まってくる舌に、円はいちいち身体をびくつかせている。 (だめ……これ、気持ちいい……) 「んぅ、っは、だめ。待って、」 「やだ。キスだけでも発散出来るか……一回試させて」  そう言ってまた、大飛は円に唇を重ねた。初めてのキスは、あまりに濃くて刺激が強くて——円はただ受け入れるのに必死だった。 「立って、られな……っ」  そう言った瞬間、かくんっと円の膝が折れる。気持ち良さに身体は抗えず、完全に力が抜けてしまった。そんな彼を、大飛は抱き止めつつ座り込み、そのままキスを続けていく。 「……っ、んっ、」  唇が離れた後、大飛の表情を見た円は自身の心臓が高鳴っている事に気付いた。彼は、完全に獣種独特の“捕食者”の目をしていたからだ。  他の獣種の人間に触られると怖かったのに、何故か大飛に触られるのは怖くない。 (むしろ、もっと——) 「……ごめん。初めてなのに強引にし過ぎたね」 「……大丈夫、です……」  気付くと、ずっと身体の内側にあったモヤモヤが無くなっているような気がした。気分もすっきりしていて、先程の抑制剤の効き目も無くなっているような気がする。けれど不思議と、自分の匂いは辺りに出ていなかった。 「身体、平気? 違和感ない?」 「そういえば……なんか、」 (ずっと前からのが……)  じくじくとした身体の奥の熱さが無くなっている。“発散”しないといけなかったそれは、たった一人の男とのキスで晴れてしまったようだ。 「熱が……引いてる」  円が呟くと、大飛は優しく微笑む。「良かった」と呟くと、自ら立ち上がって円の手を取ってくれた。  なんでだろう、と不思議そうな顔をして円は大飛を見つめた。薬でずっと抑え込んでいたのに、それすら無かった事のように身体が軽くなっている。それがとても不思議な感覚で、嬉しさで胸が躍った。

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