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第15話

 そう、いわば色情狂に扮したのも、ことさら淫猥な雰囲気を醸し出したのも、こちらの土俵に引きずり込むための布石──ひらたく言えば演技だ。  海斗は素直で、雪也好みの色に染まる素質が十分ある。心理的なハードルを少しずつ下げていけば、いずれ後ろを拡張するよう誘導しても拒まないはず。  飴と鞭を使い分けて、じっくり教育してあげる。  ルームメイト──別名、恋人(調教師と一番弟子)。  蜘蛛の巣にかかった獲物は、もがけばもがくほど糸に搦め取られる。海斗がカラクリを見破っても時すでに遅し。性欲と恋心をない交ぜに縛りつけて決して離さない。 「とりあえず今夜は、ゆうべの復習かな?」  真面目くさって独りごち、海斗の机の抽斗(ひきだし)にあるものをすべり込ませた。媚薬を配合と謳ったローション、を。  いろいろな使い道が考えられる、これを見つけしだいキョドるのは確実で、その場を取り繕うべく焦って腹筋運動でもやりはじめるに違いない。  思う壺にはまったとも知らないで。  腹筋運動の補助をしてあげる、と称して足首を押さえがてら、むこうずねを撫であげる。勉強に限らず予習は大事だ。  触れて、とりわけ鋭い反応を示した箇所は二重丸、以下ただの丸、白三角、黒三角で表す。と、いうぐあいに性感帯の詳細な分布図をこしらえておくと、のちのち重宝する。  免疫ができるよう、さりげなく且つ事あるごとにスキンシップを図るのがミソ。  雪也がそれとなく主導権を握って、海斗が自ら秘部をさらけ出す流れに持っていくまでが、イロハのイ。  窓を開け放った。素敵な夜になる、と約束するように光の粒子がきららかに舞う。     ──了──

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