34 / 113
傷跡 2-6
ーーー…
「では今日はここまでにしようか、ご苦労様。」
「はいーーー、ありがとうございました」
講義が終わり、夕人は席を立った。
その瞬間、なぜだか、少しだけふらついた。
ーーーあれ、なんだか……クラクラする…
「相模くん?大丈夫かい、どうかした?」
風間の声に夕人ははっとして、
「あ、いえーーー、大丈夫です。
ありがとうございました……失礼します」
そう言って足早に塾を出た。
外に出た瞬間、もう夕方の四時を過ぎていると言うのに、西陽がカンカンと夕人の体を照らした。
ーーーなんだか…足が、変な感じだ……ふわふわする。
2歩、3歩、歩いたところで、夕人は街路沿いの電信柱に手をついて立ち止まった。
ーーー横断歩道を渡れば、すぐそこに駅が見えてるのに……だめだ、歩けない……。
「はぁ……はぁ……」
ーーー気持ち悪い………。
急激な悪心と立ちくらみに襲われた夕人は、そのまま、その場に倒れ込んだ。
キキィーーッ!
”ーーー相模くん!”
車のブレーキ音と、聞いたことのある声。
夕人の目の前は静かに、幕が暗転するように闇へ落ちていったーーー。
ともだちにシェアしよう!