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傷跡 2-6

ーーー… 「では今日はここまでにしようか、ご苦労様。」 「はいーーー、ありがとうございました」 講義が終わり、夕人は席を立った。 その瞬間、なぜだか、少しだけふらついた。 ーーーあれ、なんだか……クラクラする… 「相模くん?大丈夫かい、どうかした?」 風間の声に夕人ははっとして、 「あ、いえーーー、大丈夫です。 ありがとうございました……失礼します」 そう言って足早に塾を出た。 外に出た瞬間、もう夕方の四時を過ぎていると言うのに、西陽がカンカンと夕人の体を照らした。 ーーーなんだか…足が、変な感じだ……ふわふわする。 2歩、3歩、歩いたところで、夕人は街路沿いの電信柱に手をついて立ち止まった。 ーーー横断歩道を渡れば、すぐそこに駅が見えてるのに……だめだ、歩けない……。 「はぁ……はぁ……」    ーーー気持ち悪い………。 急激な悪心と立ちくらみに襲われた夕人は、そのまま、その場に倒れ込んだ。 キキィーーッ! ”ーーー相模くん!” 車のブレーキ音と、聞いたことのある声。 夕人の目の前は静かに、幕が暗転するように闇へ落ちていったーーー。

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