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傷跡 4-3

    その後、最寄り駅に無事着いた、夕人と速生。 ”20分ほどの距離なら歩けるよ“と自分から申し出た夕人の言葉に、速生は頷いて、2人でゆっくりと家路を歩いた。 暖かい日差しが二人に降り注ぎ、心地よい風が吹く。 街路樹の桜よりも早く、家々の梅の木には白い花が咲渡り、どことなく甘い香りを運んでくる。春の始まりを知らせていた。 2人はただ、他愛もない話をしながら、歩いた。 「春だなぁーー……夕人、4月になったら、花見しようぜ?」 「あー……俺さ、実はこれからの時期、花粉症ヤバくて。 なんならいまこうして歩いててもちょっと目と鼻ムズムズしてる」 「ええっ……嘘だろ? なんで早く言わないんだよ……」 「えっ、いや、聞かれてないから……」 「聞いてなくても言えよな!知っときたいじゃん。 じゃあさ、俺の部屋から見える…庭の何かの木、それ見ながら、一緒に飯食う…とかは?」 「それ、もはや花見じゃないし。てか、俺の部屋でもいいじゃん、景色ほぼ一緒だよ」 「確かになぁ〜、なら俺は夕人の家のがいいな。夕人のおばさんの料理、まじ美味そうだし。 俺ん家で飯食うってなったら……うどんしか出てこねぇよ」 「ぶはっ……ま、まだ消費し切れてねぇの? 香川のおばあちゃんのうどん…」 「あったりまえよ。 まだダンボール1箱分あるぜ? なんたって乾麺だからな。そりゃあもう茹でれば伸びるし増える増えるエンドレスよ」 「ははっ…」 「夕人、高校入ったら、部活どうすんの? やっぱり、美術部?」 「んー…まあ、他にしたいことって、見当たらないからなー……速生は、バスケ部だろ?」 「まーな。市立第一のバスケ部、結構強いらしくて。県大会やらバンバン出てるらしいから、期待はしてるかな」 「へぇ、すごいじゃん。って、まだ入ってもないのに……結構強気だな」 「そりゃあ、俺のダンクシュート決まったとこ見たら、絶対、痺れるぜ!?じゃあ部活入ったら、練習見に来いよな、な?約束!」 「正直興味ないけど。……ま、気が向いたらな」 「相変わらず、塩だね〜〜〜」 好きなもの、性格も、見た目も、全然似つかない2人が、こうやって肩を並べて、一緒に歩いて、同じ場所へと帰っていく。 半年前の自分に、果たしてこんなことが想像できただろうか? きっと出来ない。 が起きてから、誰かとこうやって、話して、笑い合うというのがどういうことなのか忘れていた……いや、決して誰かに心を許すことをしてはいけないんだと、自分に言い聞かせていた。 そんな固く閉した心が、少しずつ、溶かされていくーーー… 速生とかかわっていくことでーー…。

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