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第17話

 その日、帰宅すると蒼空が出迎えてくれた。 それ自体はいつものことだが、何かを言いたそうにしているように見える。 「ん?どうかした?」 「ちょっと、お話があって……」 「そうなの?何?」  しかし、まだ玄関にいたため蒼空は「ここじゃちょっと」と言い渋った。 「じゃあ、取り敢えず座ってからにしようか」  三笠がそう言うと、ホッとした様子で蒼空が頷いた。 今のダイニングテーブルに向かい合って座り、仕切り直す。 「どうしたの?何かあった?」 「あの……俺、仕事見つけたんです。コンビニのバイトですけど」 「え?あ、あぁ。そうなんだ。どこの店舗?」  確かに蒼空は仕事をすると言っていたが、突然の報告に意表を突かれた。 「交番を曲がったところにあるコンビニです。通いやすいかと思って……」 「あ、あそこか。良かったね、決まって。頑張れよ」  つい手が出て蒼空の頭をポンポンしそうになったが、思い止まり三笠は手を引っ込める。 「はい。ありがとうございます。それで……」 「ん?どうした?」 「仕事落ち着いたらここから出ていきますから、もう少しだけ待ってください」 「あ、いや。ずっと居てくれていいって言っただろ?嫌かな、ここに住むの」 「そうじゃないんですけど……やっぱり、誰かの世話になるのは悪くて……」 「全然気にしなくて良いよ!俺は君がいてくれて楽しいんだ。ルームシェアだと思ってさ、これからも気軽にいてくれよ」 「三笠さん……」 「ていうか……俺が、君といたいんだ」  顔が熱くなるのが分かった。一体自分は何を言っているんだろう。 「そこまで言ってもらえるのは、有難いです。じゃあ、暫くは置いてもらってもいいですか?」 「もちろん」  三笠が笑顔で頷くと、蒼空も笑顔を見せてくれた。三笠は、蒼空とこれからも長く一緒にいたいと思った。    次の日から、蒼空はバイトに出勤し始めた。日中のシフトで、夕方の五時までの勤務だという。そうすれば、三笠の帰りを料理を作って待っていられるからともいう。付き合っているわけでもないのに、まるで共働き夫婦みたいだと思ってしまう。  働き始めた蒼空は、楽しそうだ。職場が合っているのかもしれない。それはそれで良いことだと、三笠は素直に思う。それ以外は、特に気には留めていなかった。  しかし、そんな三笠にも変化が訪れる。

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