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第19話
なぜ蒼空が、そういった人間と関わっているのだろう。相手もごく普通の人間なのかもしれないが。三笠はなぜか胸騒ぎがするのだった。
車のハンドルを握りながらも、頭が悶々とする。しかし、なぜ自分はこんなに蒼空のことを気にしているのか。
『あれ……』
信号待ちで車を止めた時に、ふと思い至った。自分があの男に嫉妬をしていることに。三笠が蒼空のことを気にしているのは、彼のことが自身の心を占めているから。
一緒にいたあの男は誰なのか。
気になるなら聞けば良いだろう。
しかし、直球で聞いてもいいだろうかとも思う。
自宅マンションに到着し、部屋までの間に蒼空に聞くかどうか悩んだ。
部屋のインターホンを押すと、蒼空が出迎えてくれた。いつもと変わらない光景だ。
「お帰りなさい」
「ただいま」
「今日もお疲れ様でした」
「う、うん。ありがとう。君はどう?今日は何をしてた?」
そんなこと、聞いてどうするのだと思う。リビングに入ると、ソファーにバッグをポンと放った。
そして、ダイニングテーブルの椅子に腰掛ける。
「実はさ、今日君を見たんだ」
三笠は覚悟を決めて告げた。
「え?どこでです?」
「駅前近くのカフェにいただろ?」
「あぁ、はい。行きましたけど」
蒼空はキョトンとした目を向けてくる。
「俺もちょうど、休憩で入ったんだ。一緒にいたのは誰?」
ついに聞いてしまった。変な風に思われはしないだろうか。
「職場の仲間ですよ」
蒼空は何でもないことの様に笑みを見せる。
「コンビニの?」
「はい。俺の後から入ってきたんですけど、シフト一緒になること多くて」
「そっか。良かったね、仲良い人できて」
「はい。仕事も楽しくやってます」
プライベートでも会うほどに仲良くなったということか。カフェで見たところ、相手の方が積極的そうに見えた。
「でも……」
蒼空が言いにくそうに呟く。
「でも?」
「俺のこと、気になるんですか?」
そう聞かれ、三笠の顔が赤くなった。
「い、いや。ちょっと聞いてみただけだよ」
「そうですか」
蒼空はキョトンとしたが、直ぐに笑顔を見せた。
その笑顔に、三笠の心臓はより鼓動を速める。
「大丈夫ですか?」
「あぁ、うん。何でもないよ」
「そろそろ晩ごはん食べません?実はもうできてるんです」
蒼空が言いながら椅子から立ち上がる。
「あ、そうなんだ」
「はい。温め直すんで、ちょっと待っててください」
「うん、ありがとう」
それから三笠は、蒼空の作ってくれたホワイトシチューを食べた。
食事は蒼空が作ってくれることが多いが、ますます料理の腕を上げている。ずっと蒼空の料理を食べていたいと思うほどだ。そう、三笠は胃袋までも彼に掴まれたのかもしれない。
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