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第23話
蒼空に告白をしてから、関係性がぎこちなくなるかもしれないと思ったが、そんなことはなかった。三笠が普通に接しているせいだろうか。
蒼空が普段通りでいてくれるのは、残念なようで有り難くもあった。
季節が巡り秋も深まった頃、三笠は午後十時頃に帰宅した。腹は減っているし、疲れ切っていた。このままベッドに倒れ込みたいところだ。
しかし家の中に入ると、違和感と共に変な胸騒ぎを覚えた。
『なんだ……?』
家の中は暗く、しんと静まり返っているのだ。蒼空は仕事ではないはずだし、出かけるとの連絡もない。
蒼空はどこへ行った?
もしかしたらコンビニにでも行ったのかもしれない。それなら、一々連絡をすることもないだろう。
三笠はしばらく待ってみることにした。
一時間が経った午後十一時過ぎ、まだ帰ってこない。携帯電話に連絡をしても繋がらない。一体、蒼空の身に何が起きているのだろうか。
『何かあったのか?』
刻一刻と、三笠の不安は増していった。捜索届を出そうかと思ったその時、三笠のズボンに入っていた携帯電話が着信を告げた。電話がかかってきたのだ。
『誰だ?こんな時間に……』
不審に思いディスプレイを見てみると、着信したのは知らない番号だった。出たくない気もするが、三笠はこの電話に出ることにした。
「はい」
不審感いっぱいに電話に出ると、聞き覚えのある声が返ってきた。
『夜分わりぃな』
開口一番にこの不躾な物言い。ヤツしかいない。
「もしかして、須藤か……?」
『あたり~』
怠そうに言う須藤の声に、三笠は苛ついた。どうしてあいつが電話をかけてくるのだ。しかもこんな時間に。
「俺に、何のようだ。もしかして、蒼空くんの居場所を知っているのか?」
『やっぱり刑事だ。カンがいいなぁ。フハハハハハ』
須藤は不気味に笑った。三笠の胸がざわついて仕方がない。蒼空は無事でいるのか……。それだけが心配だった。
「おいっ!蒼空くんは無事なんだろ?」
『心配なら、助けに来いよ。蒼空ちゃんが大変なことになっちゃうよ?』
ひゃっひゃっひゃと、またも須藤は下卑た笑いを漏らす。
そういえば、須藤は蒼空のことが好きだと言っていたのではないのか?
「お前、蒼空君のことが好きなんじゃ……」
『んなわけあるかよ』
鼻で笑う須藤の言葉に、三笠は唖然とした。蒼空を好きだと言ったのは嘘だったのか。蒼空と楽しげに接していたあの姿は、今日のためだったというのだろうか。
まさか、初めから蒼空に近付く目的で同じバイトを始めたというのか。
憤りに、腸が煮えくり返りそうだ。
三笠の脳裏を、様々な思いが駆け巡る。
『まぁとりあえずさ、蒼空ちゃんを迎えにきたらどうよ?海近くの倉庫にいるからさ。待ってるよ。あ、そうそう。ドラマじゃねぇけどさ、一人で来いよ。仲間連れてきたらどうなるか分かんねぇからな。ハハハハハハハ』
電話は須藤の不気味な笑いと共に一方的に切れた。
時刻は午後十時十五分。今からでも助けにいかなくては。三笠はそのまま自宅を出て再度車を走らせた。
『どうか、無事でいてくれ……』
運転をしながらそう祈る。バクバクと早打ちをする心を落ち着かせながら。
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