22 / 63
第22話
「え?あぁ、そうです。あの人です。結構よくしてくれてて、この前家にも行ってきたんですよ」
「へぇ……仲良いんだね……」
完全な嫉妬だった。
「まぁ、そうですね。バイト仲間で一番仲良くしてもらってます」
あの男に蒼空をとられたくない。その一心で三笠は想いを告げた。
「俺、君が好きだ」
「え?え?」
蒼空の目を真っ直ぐに見つめて告げると、彼は酷く動揺し目を泳がせる。
「蒼空くんが好きなんだ。アイツにとられたくない」
「で、でも……」
「もしかして……もうアイツと付き合ってたりする?」
「いえ、そんな関係じゃないですよ。ただの友達です」
「……そう?」
どうやら、須藤はまだ蒼空に告白をしていないようだ。先手を打てたか。
「じゃあ、もしよかったら、俺と付き合って」
真摯に告白をしたが、蒼空の答えはどうなるか。少しの希望と駄目かもしれないという思いが交錯する。
「でも俺、前科持ちだし……」
「え?あー。君は確かに事情聴取は受けたけど、別に逮捕されたわけじゃないだろう?前科はついてないよ」
思いも寄らない蒼空の返答に、三笠は苦笑してしまう。
「義理だけど、父親は殺人犯だし……」
「蒼空くんは蒼空くんだよ」
「周りには色眼鏡で見られるし、きっと三笠さんにももっと迷惑かける……」
「そんなことは気にしないで。俺が良くて君と今もいるんだから」
「あと俺、三笠さんのことは好きですけど、恋愛の好きなのかどうかはまだ分からないです」
「そか。俺のこと嫌いじゃないなら、取り敢えず今は”友達”として仲良くしていこう。俺の気持ち、知っててくれたらそれでいいからさ」
「は、はい……分かりました」
蒼空は頬を朱に染めた。どこか落ち着かない様子だ。そんな様子が何だか可愛く見えてしまう。
告白に対してはOKの返事はもらえなかったが、それはどこか想定していたことだった。一緒にいてくれるならそれでいい。いつか自分を見てくれる日がくるなら。
ともだちにシェアしよう!