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第22話

「え?あぁ、そうです。あの人です。結構よくしてくれてて、この前家にも行ってきたんですよ」 「へぇ……仲良いんだね……」  完全な嫉妬だった。 「まぁ、そうですね。バイト仲間で一番仲良くしてもらってます」  あの男に蒼空をとられたくない。その一心で三笠は想いを告げた。 「俺、君が好きだ」 「え?え?」  蒼空の目を真っ直ぐに見つめて告げると、彼は酷く動揺し目を泳がせる。 「蒼空くんが好きなんだ。アイツにとられたくない」 「で、でも……」 「もしかして……もうアイツと付き合ってたりする?」 「いえ、そんな関係じゃないですよ。ただの友達です」 「……そう?」  どうやら、須藤はまだ蒼空に告白をしていないようだ。先手を打てたか。 「じゃあ、もしよかったら、俺と付き合って」  真摯に告白をしたが、蒼空の答えはどうなるか。少しの希望と駄目かもしれないという思いが交錯する。 「でも俺、前科持ちだし……」 「え?あー。君は確かに事情聴取は受けたけど、別に逮捕されたわけじゃないだろう?前科はついてないよ」  思いも寄らない蒼空の返答に、三笠は苦笑してしまう。 「義理だけど、父親は殺人犯だし……」 「蒼空くんは蒼空くんだよ」 「周りには色眼鏡で見られるし、きっと三笠さんにももっと迷惑かける……」 「そんなことは気にしないで。俺が良くて君と今もいるんだから」 「あと俺、三笠さんのことは好きですけど、恋愛の好きなのかどうかはまだ分からないです」 「そか。俺のこと嫌いじゃないなら、取り敢えず今は”友達”として仲良くしていこう。俺の気持ち、知っててくれたらそれでいいからさ」 「は、はい……分かりました」  蒼空は頬を朱に染めた。どこか落ち着かない様子だ。そんな様子が何だか可愛く見えてしまう。 告白に対してはOKの返事はもらえなかったが、それはどこか想定していたことだった。一緒にいてくれるならそれでいい。いつか自分を見てくれる日がくるなら。

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