25 / 63

第25話

 男たちを倒した三笠は、すぐさま蒼空のもとに駆け寄った。 「大丈夫か!?怪我はない?」  口を封じていたガムテープを剥がし、手を縛るロープを素早く解く。 「は、はい。大丈夫です」  蒼空が解放された手をプラプラさせながら答えた。 「良かった……本当に……」  蒼空がいなくなり、生きた心地がしなかったのだ。 「……すみません、俺も油断してました」  蒼空は泣きそうな顔をした。思わず手を伸ばし抱き締めたくなったが、そんなことをしている状況ではないため手を引っ込める。 「ううん。もう、心配いらないからね」  そう声をかけると、蒼空は僅かにホッとした表情を見せた。 三笠が安心したのも束の間、静観を決め込んでいた須藤は椅子から立ち上がり、ゆっくりと三笠や蒼空の方に近付いてくる。そして、三笠の顎に手を添えて顔を近付けてきた。三笠は思わず顔を背けた。須藤がニヤリと笑ったことは分かった。 「アンタ、想像以上に強ぇえんだなぁ。アイツら皆伸しちゃうんだからさぁ。まるで映画みたいだったぜ。」  須藤は感服したように言いながら、片方の手に持つナイフで三笠の頬をペチペチ叩いた。 「見直したぜ、アンタ。でも、俺にゃあ……」  その刹那、三笠は須藤のナイフを持つ手を叩きナイフを落とさせ、彼を突き飛ばした。不意打ちに、須藤は床に尻もちをついた。 「何すんだよ!」  須藤が睨み上げる。それを見た三笠は、しゃがんで須藤と目線を合わせる。 「油断しているからだ。そんなことより、これは立派な拉致・監禁だよな?署で話を聞こうか」  そう言いながら、三笠はズボンのポケットから手錠を取り出し、須藤の両手にかけた。 「おい!冗談じゃねぇ!外せ!こんなの!」 「今さら暴れてもしょうがないだろ。観念しろよ。現行犯だ。こうなることくらい分からなかったのか?」 「うるせぇよ!」 「お仲間はうちの署の者たちがこれから引き取りに来るからさ。さぁ、立てよ。署に行くぞ」  三笠は須藤の腕を掴み立たせた。すると、遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。パトカーは、三笠がここに来る間に署に連絡し来てもらうように手筈を整えていたのだ。三笠にしてみればちょっと来るのが遅いかと思えるが。  須藤には仲間を連れてくるなと言われたが、やはり連絡しないわけにいかなった。  二台のパトカーが到着し、倉庫内に三笠の同僚四人が入ってきた。 「待たせたな。あれ、もう片付いたか」 「いや、いい頃合さ。悪いな、来てもらって」 「大丈夫だ。お前には借りがあるしな」 「ハハ。頼むわ、コイツ」  三笠は須藤の頭をポンポンと叩いた。蒼空とさして年齢が変わらないだろう男の頭を。 すると須藤は、三笠の手を振り払うように身体を捩った。そんな須藤の腕を掴み、三笠は立たせた。 「チッ、呼ぶなっつったのに」  その言葉を三笠は聞き流す。 「ホラ、立てよ」  須藤は緩慢な動きでさも怠そうに立ち上がる。 「わぁってるよ、うっせぇな……」  三笠は、須藤はあっさりと捕まったなと思う。実は内心拍子抜けしたくらいだ。  その後、蒼空は三笠の車に乗せ警察署へと連れて行った。須藤側は、同僚たちのパトカーで連れて行ってもらうことにした。  パトカーの車内では、須藤が悪態をついたり少し暴れるなどしたため大変だったようだ。

ともだちにシェアしよう!