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第45話

 警察署に配属された後の蒼空は、雪田とコンビを組んでいた。それから一年、三笠は新年度から強力チームのチーム長に任命された。  チームメンバーから刑事課の課長に就任した横山が、チームメンバー皆を集め発表したのだ。 「え、俺ですか?」  三笠は大いに驚いた。チームは六人いて、その中には三笠の先輩もいるのだ。昨年度までのチーム長が横山だったので、それを引き継ぐ形となる。 「何だ、嫌なのか?」  冗談交じりに問い詰められた。 「え、嫌というわけじゃないですけど。俺でいいんですか?」 「問題ないだろう。お前もそろそろ人の上に立ってみろ」  横山にそう言われ、三笠が奥に立っている蒼空の方を見ると、彼はコクリと頷いた。誰にも気付かれないほど一瞬で。 「はい。じゃあ、務めさせてもらいます」  三笠はチーム長となることを決めた。 「じゃあ、これからよろしくな」 「はい」 「それと、コンビをシャッフルして欲しいんだ」  横山の言葉に、チームメンバーたちがざわついた。 「え、変えるってことですか?」 「チーム内のことは三笠が決めるものかもしれないが。長く一人とコンビを組んでいれば、安定感が出るだろう。しかし、コンビを変えることで良い化学反応が起きるかもしれない」 「化学反応、ですか?」  雪田が不思議そうに尋ねた。 「そうだ。他のメンバーと組めば、新たな発見なんかもあるかもしれないだろ?」 「俺、今のままが良いです」  珍しく雪田が意見したので、横山は目を丸くしたがすぐに柔和な表情へと戻った。 「慣れたものを変えるのは大変だよな。じゃあ、三ヶ月変えてみてダメだったらこれまで通りというのはどうだ?」 「分かりました」  雪田が了承したのを確認して、横山が頷いた。 「皆もいいか?」 「はい」  三笠や蒼空も含め、メンバーたちは揃って頷いた。 「じゃ、発表するな。まず、沢井と雪田」 「あっ、よろしくお願いします」 「覚悟しろよ、雪田」  雪田より先輩である沢井が冗談混じりに笑うと、雪田は「手加減してくださいね」と手を合わせた。 「次、佐藤は山田と組んでもらう」  佐藤はベテランの域にある刑事で、山田は蒼空が来る一年前からいる刑事だ。 二人とも異論はないようで、「はい」と双方共に返事をした。  ということは……。 「最後、三笠は川上と組んでくれ」  横山の言葉を聞くと、三笠は蒼空の方を見た。すると蒼空もこちらを見ていて、目が合った。 『どうしよう……』  蒼空の目はそう訴えていた。それに対して、三笠は『大丈夫』と言うように僅かに頷いた。

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