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第51話

 それから二週間後の夕方に、蒼空から電話がかかってきた。心なしか声が明るい気がする。 「どうしたの?」 『明後日、退院することになったんですよ』 「え、本当?良かったな〜」  三笠にとっても嬉しい報告だった。 『ありがとうございます』  電話越しに、律儀に頭を下げている蒼空が思い浮かぶ。 「何時頃に退院するの?」 『午前十一時ですけど……』 「じゃあ、迎えに行くから」 『え?でも仕事ですよね?』  蒼空の戸惑いが三笠にも伝わってきた。 「大丈夫だよ。ちゃんと時間休取っていくから。待っててな」 『本当に、いいんですか?』 「うん!退院したら、すぐウチに来るといいよ。ちゃんと部屋は整えておいたから」 『うわ……何から何まですみません』 「いいんだって。じゃ、明後日に会おう」 『はい。よろしくお願いします』  電話を切ると、三笠の気持ちが舞い上がった。 「先輩、浮かれてますね、相当」  蒼空が退院する日の朝、そわそわしている三笠に雪田が指摘した。 「まぁ、やっと相棒が戻ってくるんだからな」 「そうですね。......俺よりもいいっすか、あいつ」  雪田は少し拗ねたような顔をしている。 「何だよ、急に」 「何か、二人って雰囲気が違うっすよね」  雪田にそう言われて、三笠は内心ギクリとした。しかし、素知らぬフリをする。 「……え?違うって?」 「イヤ、良くわかんないっすけど、妙に仲良いっていうか……」 「そうか?まぁ、仲間だからな」 「それだけっすかね……」  雪田は若干腑に落ちない様子だったが、三笠はやや話題を逸らすことにする。 「今日、昼前に病院行ってくるから。時間休で」 「え、三笠さんが?」 「そうだよ。荷物持ち他にいないし。退院に付き添うんだよ」 「へぇ……やけに親身なんすね」 「ま、まぁ、俺の相棒だからな」 「ふ〜ん……じゃあ、もし俺が入院しても、親身になってくれましたか?」  雪田が冗談とも本気とも取れない調子で聞いてきた。 「それは当たり前だろ。お前も大事な仲間だからな」  三笠は軽く、ポンポンと雪田の頭を叩いた。 「そうっすか?なら良いんですけど」 「さぁ、仕事しろよ、仕事」 「は〜い。分かりました」  雪田は納得がいかないようだったが、自分のデスクに戻った。

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