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第63話

「一時間も帰ってくるのが遅くなってしまったけど、誕生日おめでとう」  二人はワインのグラスを合わせた。 「ありがとうございます」 「今年もこうして一緒にいられて、俺は幸せだよ」 「俺もです。今日はとても楽しかったです」 「本当?疲れただろ?」  三笠の問いに、蒼空は笑顔を見せた。  「いいえ。運転してくださったのは三笠さんですし」 「俺は運転好きだからさ。久々に楽しかったよ」  それを聞いた蒼空は、ホッとしたように笑顔を見せワインを飲んだ。  食事の後に、店のスタッフがケーキを三笠たちの席に持ってきてくれた。ホールだと食べきれないので、一人サイズにカットされたものだ。 他のテーブルに届けられるケーキだと思ったのか、蒼空はびっくりした表情を見せる。 「甘いものは好きだろ?これなら食べやすいと思って」 「そうですね。ありがとうございます」  笑顔を見せた蒼空はケーキを食べ始めた。  チョコレートケーキを美味しそうに食べる蒼空の姿を見て、三笠は幸福感に満たされた。まだケーキを食べていないのに、幸福すぎて満腹に感じてしまいそうだ。  二人共ケーキを食べ終わった後に、三笠は奥から紙袋を持ってきた。事前に、店に置かせてもらっていたのだ。 「これ、蒼空くんにプレゼント」 「わ、ありがとうございます」  蒼空の目が輝いたのが分かった。 「開けてもいいですか?」 「もちろん」  三笠が笑顔を向けると、蒼空は紙袋の中の箱を取り出して、巻かれているリボンを解いた。箱の蓋を開けると、中には三笠の選んだスニーカーが入っている。 「靴だ……」 蒼空は目を瞬かせた。 「捜査に履いていけるかと思って」 「そうですね。しかも、俺の好みのデザインです」 「そう?それなら良かった」 「これからも捜査、これ履いて頑張りますね」 「うん……」 「ずっと、永遠に俺と一緒にいてください。お願いします」 「もちろんだよ。約束する」  蒼空の指し出した小指に、三笠も自分のそれを絡めた。  二人には、共に年齢を重ねていくビジョンが見えているのだろう。

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