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第63話

蓮ちゃんの唇が近づいてオレは瞼を閉じる。 そして、お互いの舌が絡んだ途端、またわかる。 二人して気づかないふりをしてたんだってこと。 そうじゃなきゃ 今日まで一緒にいられなかったんだってことも。 つくづく、オレたちはまったく、 オトナなんかじゃないのだ。 蓮ちゃんを真っすぐに見上げる。 いまさらもう逸らせない。 ここからはもう蓮ちゃんという存在を、全身で受け入れるだけなのだから。 見上げる蓮ちゃんはいい男だなと思う。 それは姿カタチだけでなく、 蓮ちゃんをつくりだしているすべてに、 上手く言えないその「いい男」ってのが溢れてる。 「もう戻れないね。」 「やめたい?」 「まさか。」 やめたいわけじゃない。 ただもう戻れなくなるんだなと思っただけだ。 「うやむやにしておきたかったんだよ。」 「え?」 はぁ・・と息を吐く蓮ちゃんは、 眉が下がってもいい男のままだ。 「俺の世界から杏野がいなくなるなんて、 俺は考えられなかったんだ。」 連ちゃんは手の甲を、オレのほっぺにすべらせる。 「そっか・・・そうなんだ。それは・・・嬉しい。」 「別に恋愛っていう枠にならなくていいかなって。 ただ、俺は杏野といると誰よりも居心地が良くて、 一緒に・・なんかとにかく、そばにいたくて仕方なかった。 んでもって、だからもうそれで・・ それだけでいいかなって思ってた。」 「うん。わかる」 オレだってそれでいられたらそれでよかったんだ。 でもそれじゃあいられなくなっちゃったってだけ。 「そんでもっていま、こんなはじめてのコトも、 杏野となら平気なんだなってわかった。」 「まだなんもシてないのに、そんなこと言っちゃっていいの?」 「いいさ。もうさすがにわかるからな。」 きっともう蓮ちゃんは 「たぶん」を言わないのだなと思った。 それはもうお互い、 誤魔化そうとはしていないということだった。 「じゃあ・・・」 両手で蓮ちゃんのほっぺを包む。 ちょっと前、 隠れてちゅっとしたそのほっぺは、今日も変わらず柔らかい。 「コレは恋愛だね。」 まっすぐ蓮ちゃんを見つめた。 「ああ。そうだな。」 これは恋愛。 だから・・・ 「覚悟しろよ。」 「蓮ちゃんこそ。」 ほっぺを覆ったままで、 その整った顔を引き寄せてキスをする。 するとあっという間に舌が絡んで、 それはなんともえっちな音を立てる。 蓮ちゃんの手のひらは、 オレの肌の上をスルスルと動いて乳首を弾くから、 オレはくぐもった声を出して身体を震わせた。 そうして、 少しも躊躇せずにもう片方の乳首を口に含むから・・・ 「んぁはっ・・っ」 オレも躊躇する暇なく、声をあげた。 ☆ そうやって声をあげてしまえば、 全身にまわったドクドクが、ちょっとは和らいだような気もした。 じゃんけんで決めた「こっち側」に、 決心してしまえばなんてことはない、 自分もちゃんと男で、 ただただ受け身になるってことにはならない。 それまでの経験が勝手に身体を動かして、 お互い自分で自分のズボンもパンツも脱げば、 お互いちゃんと・・・しっかり反応してた。 二人して同時にそれに気づけば、 まるで息を合わせたかのようにアツいため息が漏れる。 それは安堵。 そして期待。 ココから始まる「はじめて」に、二人して興奮する。

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