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星空の下での決意④

「そう思うと渉太くんって一途だよね」 「へ?」  モップを持ちながら物思いにふけ、ぼんやりと遠くを眺めていると花井さんに話の矛先を自分に向けられて我に返る。渉太が首を傾げると手招きをされたので、顔を近づけると耳元で「か・れ・し」と囁かれて、足先から頭の先まで熱が上がっていく感覚を覚えた。  花井さんには律と恋人関係であることは気づかれている。というのも、以前律仁さんが渉太の勤務先に堂々と芸能人オーラを放った格好で現れたのが原因ではあったが、花井さんは他人無暗に話したりせずに渉太との出来事として留めてもらっていることには感謝していた。 けれど、時折彼氏ネタで揶揄ってくることはあるけど……。 「両方で独り占めできているんだもんねー。羨ましいくらいだよ」 「それは、そうだけど……」  否定するにもあまりにも事実すぎて押し黙る。 「移ろう隙なんってないくらい溺愛されてるもんね。頻繁に送り迎えあるし」 「嬉しいけど、正直いつかお店に迷惑かけるんじゃないかってヒヤヒヤしてるよ……」 「またまたー。のろけちゃってー」 芸能人としての自覚があるのかと問い詰めたくなる程、頻繁に渉太のバイト先に顔を出しに来ては、終業の十五分前から駐車場に車を止めて待機している。 律仁さんの身の危険を案じて何度も注意しても本人曰く、一分一秒でも早く渉太と会いたいからという言い訳がもれなくついてきてはキスでうやむやにされてしまうのが最近の渉太と律仁だった。 律仁さんに溺愛されていることは素直に嬉しいし、日常生活を含めすべてに後ろ向きで半ば諦めていた頃に比べたら自分が誰かと一緒に楽しく過ごせていることはこの上なく幸せなことだった。 けれど満たされれば満たされるほど時折、自分はこんなにも律仁さんに溺愛され、甘やかされていていいものなのだろうかと彼との年月を重ねる度に思える自分がいる。 律仁さんは仕事で目まぐるしいほどに飛躍をしている。一方で、渉太自身は就職先が決まったものの、漠然と彼と共にあり続ける為にも自分も釣り合う存在にならなければならないような気がしていた。 渉太をこんなにも将来について悩まされる出来事が起こったのは今年の初めに、律仁さんと大樹先輩と尚弥と共に真冬のキャンプへ出かけた日、律仁さんに一緒に海外移住を誘われた時からだった。

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