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星空の下での決意⑤
幼い頃からの知り合いで、未だお互いに蟠りが解けないという長山大樹 先輩と渉太の高校の同級生である藤咲尚弥 を含めてのキャンプ。
最初に渉太が誘った時に先輩には断られたが、当日の朝になって律仁さんに『ちょっと寄り道するから遅れる』と連絡を受けて、自宅で待機していると後部座席で居眠りをしている寝巻姿の大樹先輩が同乗していて一驚した。
まさか、律仁さんが半ば強制的に大樹先輩を連れてくるとは思わなかったが、また四人で集まることができたのは嬉しいことだった。
尚弥が横浜駅前から車に乗り込み、先輩と並んだ途端に後部座席から、お互い遠慮をしているようなぎこちない空気は感じたものの、尚弥が先輩と少し距離を詰めたい気持ちを知っていた渉太は黙って二人を見守っていた。
現地に着き、楽しい食事を終えた後、食器洗いの手伝いに尚弥が先輩の元へ向かって行ったのは不安もあったが少しだけ安堵していた。このまま二人の距離が少しずつでも近づいてくれれば本望だと思った。
泥酔してアウトドアテーブルに伏せて眠っている律仁さんの横で渉太はテーブル周りの片付けを進める。
「しょーた」
余った食材をクーラーボックスに仕舞い終えたところで背後から声がして振り返ると律仁さんがテーブルに伏せたまま眠気眼で此方を見てきていた。
「律仁さん、起きましたか」
「うーん」
「呑み過ぎですよ」
渉太の問いかけにゆっくりと体を起こすと、目元を擦り、手元にあったコップの水を一口飲んだ。
「大樹と尚弥くんは?」
「片付けに行きました」
「二人で?」
「はい」
「ふーん」
少しは蟠りがとかれることを願いながら、片付けがひと段落した渉太は律仁さんの元へ歩み寄り、隣の椅子に座ろうとしたところで伸びをしていた彼に左手を掴まれた。
「渉太、ちょっと散歩したい。付き合ってくれる?」
角度的に見上げられた形となった彼の上目遣いの頼みに胸をキュンとさせながら、断る理由などなく、渉太は「もちろんです」と頷いた。
先陣を切って湖沿いを歩く律仁さんについて、水面に移る月を眺めながら歩く。
都心にいたらこんなゆっくりとした時間を過ごすことはできない。
律仁さんはトップアイドルだし、常に記者の目を気にして行動しなければならない。律仁さん自身が所かまわずハグをしてくるような自由奔放な人だからこそ、自分が心を鬼にして警戒してやらなければならなかった。
今日くらいは自分から手を繋いでみてもいいだろうか。
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