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星空の下での決意⑦
「俺さ、渉太と出会ってからプライベートはもちろんだけど、仕事が楽しいんだ。もともと仕事には誇りを持っていたけど、自信がついたっというか、律の俺も好きになれてきてる気がする」
以前から『アイドル律』であることの自分にコンプレックスを抱いていたようなことを打ち明けてくれたことを思い出す。だから渉太と出会った当時は嘘ついて律仁として近づいていたのだと正直に話してくれた。
「それは……。良かったです。ファンとしても、恋人としても律仁さんには笑顔で居て欲しい想いは変わらないので……」
アイドル律を渉太が見ているときの嫉妬心はあるけれど、最近の律はカリスマ性のある顔から素に近い人間味のある表情を見せることが多くなったと渉太も感じていた。ファンの間でも評判がいいというのは耳にしていたし、心から仕事を楽しんでいることが映像を通して伝わってくる。
それが自分のおかげというのは、少し照れてしまうが……。そんな僅かに赤面している渉太の傍らで律仁さんの表情は変わらずに真剣だった。
「それで……。仕事が楽しくなるにつれて欲もでてきてさ、日本だけじゃなくて海外を拠点に活動したいって思ってるんだ」
『海外』と聞いて、行った経験のない渉太は異次元すぎて凄く遠く感じた。よく有名俳優のハリウッド進出なんてニュースを見るが、改めて律仁さんも芸能の人なのだと気づかされる。けれど、推しが飛躍をすることは喜ばしいことだった。
「凄いですね。俺には海外とか想像できないですけど、律仁さんが色々な場所で活躍するのは嬉しいですし、応援したいです」
律仁さんが海外へ行ってしまうなんて寂しいけど、自分には止める権利なんてない。それに、自分は散々彼に背中を押されて勇気を貰ってきた。今度は律仁さんが前に進もうとしているのだから背中を押せる存在でありたかった。
「それってファンとして言ってるでしょ?渉太としては?」
完璧な返答だったと豪語していたが、思わぬ律仁さんからの問いに言葉を詰まらせる。
本心からの言葉ではあったが、律仁さんは自分の答えの中に何を求めて問うてきているのだろうか。
寂しいと言ってしまえば、律仁さんを引き留めることになりかねないからそんな妨げになることはしたくない。
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