あれから何度かダリウスと簡単な依頼をこなしていき、お小遣いも増えてきた。既にこの世界に来て二週間は経っている。 そろそろ装備とかを揃えたいから、外出することに決めた。ダリウスはリアムと一緒にギルド長に呼ばれてるらしい。 この世界に来て初めての単独行動だから、めちゃくちゃ楽しみだ。 「部屋で大人しくしておくんだよ」 「はーい」 「勝手に外に出たりしたらいけないよ」 「へーい」 出かける前、ダリウスが念を押してくる。テキトーに返事をすると、困ったような顔をされてしまった。 「……追跡魔法でもかけておくか……」 不穏な言葉が聞こえてきて冷や汗をかく。ダリウスの過保護は少し度を越している気もしないではない。 「そこまではしなくてもいいか」 結局考え直してくれたのか、魔法をかけられることはなかったことに安堵する。 そんな魔法かけられたら、俺の外出計画がダメになってしまう。 「気をつけてな〜」 「ああ、行ってくるよ」 挨拶を交わしながら、額にキスをされて鼓動が跳ね上がった。完全に油断していたから心の準備が出来ていなくて、すごく恥ずかしい。 額から唇を離して、頬をひと撫でしてから、ダリウスが部屋の外に出ていく。それを赤い顔をしながら見送った。 それからすぐに、急いで外出の準備をして、裏口から外に出る。広い屋敷なのに使用人は一人も居ないから抜け出すのも楽勝だ。フードもちゃんと被っているし、装備を買って帰ってくるだけだから大丈夫だろう。 鼻歌を口ずさみながら街の中を進んでいく。装備屋の場所を教えて貰っていないから自分で探し出すしかないけど、散策もついでにできるから一石二鳥だ。 街の賑わいを楽しみながらゆっくりと大通りを進んでいく。ダリウス達と居るときはあまりのんびり出来なかったから、あらためてこうして見渡してみるといろんな物が視界に入って楽しい。 「おっちゃん、装備屋の場所ってわかる？」 「それなら魔導書屋の角を曲がった所にあるよ。旅の人かい？」 商人のおじさんに話しかけたら、快く場所を教えて貰えて助かった。 「最近住み始めたんだ。冒険者をしてるんだよ」 「そうなのかい。最近モンスターの動きがおかしいってんで冒険者は大忙しらしいからね。頑張ってくれよ」 「うん！ありがとう」 魔物の動きがおかしいっていうのは気になるけど、先を急がないといけないからお礼を伝えて、言われた道を進んでいく。魔導書屋の前を通り掛かったら、魔法をかけられた本が棚の周りを飛び回っているのが見えて、曲がり角で足を止めてしまった。 その瞬間、タイミング悪く誰かとぶつかって尻もちをついてしまう。