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交換条件と威嚇③

武器も買いたかったから、少しでもお金は残しておきたいんだ。 二人並んで歩き始める。 そこでエドが右脚を引き摺っていることに気がついた。杖を持っているのもそのせいみたいだ。 「足怪我したのか?」 「……古傷なんだ。……やはり覚えていないんだね」 後ろの方は声が小さすぎて上手く聞こえなかったけど、昔怪我をしたことはわかった。魔術で治したり出来ないんだろうか。 聞きたいけど、あまり踏み込んだことも聞けないから口を噤む。 装備屋に入ると、品揃えの多さに驚いた。マネキンが着けているフル装備は手頃な値段で、格好いい。棚に置かれている個別の装備を好きに組み合わせることもできるみたいだ。 「すげえ!」 「装備屋に来たことがないのかい?」 あるわけない。装備屋って現代でいうとこのファッションショップみたいなもんなんだろうけど、この世界に来たばかりの俺にはまったく馴染みがない。 「初めてきた。なあ、折角だしエドが俺に合いそうな装備を選んでくれよ」 俺には装備の目利きは出来ないし、王太子なら良さそうなのを選んでくれそうだから思い切って頼んでみる。 「いいのかい?」 「おう。最高に格好いいの選んでくれよな」 エドが思案しながら店内を回り始める。その後ろをついて行きながら、装備を選んでくれるのを待つ。 (やっぱり見覚えあるんだよな) 横顔を見つめながら記憶を辿る。前世でこんなイケメンに出会ってたらまず忘れないだろう。でも、この世界に来てからエドと話すのは初めてだ。となると、この感覚はクリスの感覚ってことだ。 エドもクリスのことを知っていそうだし、仲が良かったのかもしれない。 (たしかエドは王太子って言ってたな。クリスが騎士団長ってことは主従関係ってことだよな) それなら面識あるのも頷けるか……。でもそれだけじゃない気がするんだよな。 「これなんてどうかな」 頭を悩ませていたら、エドに話しかけられて意識を引き戻した。エドの指先を辿ると、ショーウィンドウに白銀色のフル装備が飾られているのが視界に映る。青いラインで模様が掘ってあって、細部の装飾も細かく、綺麗だ。見惚れるほどに上質な装備だけど、値段が可愛くない。 「めちゃくちゃ格好いいけど、高すぎるよ」 いくら王太子でも、払ってもらうのは申し訳ない。手持ちでは到底買えない額だし、別のものにした方がいい。諦めよう。 「これを君に贈りたいんだ」 なのに、真剣な瞳で見つめられながらそんなことを言われるから、断りの言葉が引っ込んでしまった。

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