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俺の名前は……④

ドロっとしてて、煙を吸ったみたいに息苦しい、こんな気持ち知りたくなんてなかった。 「クリスとなにがあったのかなんてわかんねーよ!俺はこの身体を借りてるだけの赤の他人だし、お前にとって俺なんてクリスの代わりみたいなもんなんだろうけどさ。でも、俺は……」 涙が溢れてきて、同時に悔しさすら芽生える。泣いたのなんて前世を含めてもいつ以来かわからない。泣いてる理由すら曖昧だ。 「ふっ、可愛いね」 なのに、ダリウスが泣いてる俺を見つめながら笑を零した。それにムッとしてしまう。長い指が頬に添えられて、涙をすくいとる。 「まるでクリスにヤキモチを妬いているようにしか聞こえないのだけど」 「はっ、はあ!?ヤ、ヤキモチなんか妬くわけないだろ!」 「ふふ、やっぱり可愛いね」 「だから!違うっていってっ……」 言い返そうとしたのに、突然キスをされて言葉が出てこなくなった。何度もしたはずのそれが、今はとにかく心地よくて、心の底から知らない感覚が溢れてくる。 ダリウスってこんなにいい匂いしてたっけ。 一瞬いつもの目眩が起こり、そのすぐ後になにかが体内から溢れ出して俺とダリウスを包み込むのがわかった。 急激に荒くなる呼吸と、有り得ないほどの全身の疼きに身悶える。 「な、んだ……これ……」 「っ、発情か……っ、はぁ……すごく濃厚なフェロモンの香りだ」 「ん、うぅ……あっ」 舌先が絡み合う。痺れるような快楽が脳を溶かすような感覚。初めての感覚に戸惑う。笑を浮かべていたダリウスも今は余裕なんて微塵も感じない。 ただ、欲望の滾る(たぎる)瞳が俺の蕩けきった顔を映し、どこから食べようかと思案しているように感じられた。 「あっ、ダリウスぅ、だりうすっ……なんか変っ」 疼く下半身をダリウスの太ももへと擦り付けて、快感を逃がそうと試みる。羞恥心とはち切れそうな理性が、必死に止めろと自分に警告する。なのに、一向に擦り付ける腰は止まってくれない。 「あぁ……本当に俺は君のことが愛おしい」 「んん、んあ、あんっ、らめっ」 ダリウスの手が着ている装備を器用に外し、シャツの下に潜り込んでくる。敏感になった乳首に指先が触れるだけで、ビクビクと身体が反応を示す。 まるで自分の身体じゃないみたいだ。 軽く乳首を爪先で弾かれる。 「ひぃぁっ、あっ」 壁際に追い詰められると、シャツを捲られてダリウスの唇が直接乳首に触れた。優しく食まれたかと思えば、先端を嬲る(なぶる)るように舐められる。水音がダイレクトに耳へと響き、心音が上昇していく。 気持ちよくて、あられもない声が出てしまう。 唇を離したダリウスがもう一度深く熱を含んだキスをしてきた。 「俺は君のことを大切に思っているよ。本当だ。姿形はクリスと同じだとしても、君の魂は、君自身は、なにもかもが彼とは違う」 「んっ、ぁ、クリスのこと好きでもいいっ。忘れられないのは当然だってわかってるっ。んっ、だから、それでいいから……俺の名前を呼んで欲しい。俺自身を見てっ、知って」 「っ、約束する。これからはちゃんと君と向き合う。だから、俺に君の名前を教えて欲しい」 何度もキスをする。その合間に、言葉を交わしてはまた求め合う。 お互いの熱も、匂いも、なにもかもすべてが絡み合い、心が通じ合うような不思議な感覚がする。

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