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油断大敵!棚からぼた餅⑥
「なんか変じゃないか?気のせいなのかな」
「たしかに変だね。魔物がなにかに怯えて隠れてしまっているようだ」
ダリウスも異変を感じているようで、少しだけ歩くペースが遅くなる。慎重に進まないと危ないって判断したみたいだ。
またしばらく歩くと、広い場所に出た。見上げてみるけど、真っ暗闇で天井は見えない。
「あれなんだ?」
隅の方に、布と白っぽいなにかが落ちているのが見える。罠がないか確認しながら近づくと、それが衣服に包まれた人間の骨だということがわかった。傍らに、なにかが割れた破片が散らばっている。
亡骸の前に膝をつき、まだら模様の破片を手に取ったダリウスが眉を寄せた。嫌な予感がする。
「……ドラゴンの卵だ」
「ドラゴンの卵!??」
驚きすぎて大きな声が出てしまった。ここに殻があるってことはダンジョンにドラゴンがいるってことになる。
「なんでそんな物がここにあるんだよ」
「原因に心当たりがある。一旦持ち帰ってギルドに報告した方が良さそうだね。魔物達の様子がおかしいことにも関係があるかもしれない」
迷い込んだダンジョンで、まさかこんな発見をするとは思っていなくて唖然としてしまう。それに、ドラゴンと聞くとクリスのことが思い出されてしまって胸が苦しい。
「なあ、考えすぎかもしれないけど……これって祭事のとき出てきたドラゴンと関係あったりするのかな」
「……おそらくね」
布で殻を包んで袋に入れたダリウスが立ち上がる。無表情を見つめながら、俺も続いて立ち上がった。
「早く出ようぜ」
「そうだね。ダンジョンを出たら兎肉を食べないと」
「おう!たらふく食おうぜ」
クシャリと頭を撫でられて目を細める。クリスの件が絡んでいるかもしれないのに、なんとなくダリウスから余裕が感じられる気がしていた。
自分の中で少しだけ、思いを消化できたのかもしれない。
結局、魔物に遭遇しないままダリウスの先導のもとダンジョンを抜けてしまった。入ってくる日差しを顔に浴びながら、外へと出る。
大きく伸びをして息を吸い込めば、新鮮な空気が全身を満たしてくれる。ダンジョン内はとにかく鬱々としていて、息苦しかったから、外に出られて本当に良かった。
「ここってどこなんだ?」
出口には野営地のようなテントがいくつもあって、人工的に整地された場所のように思える。ダンジョンの出入口は、俺たちが落ちた場所にあった入口と似たような作りをしているみたいだ。
「ここは森の中心点だよ。ダンジョンに入るための正規の入口で、冒険者はここで数日すごしながら少しずつ階層の攻略をしていくんだ。でも、見た限り人は居ないようだね。魔物が出現しないから、他のダンジョンへ移動したのかもしれない」
たしかに、テントはあるけど人がいる様子はない。
ドラゴンの卵の件もあるし、早く帰った方が良さそうだ。
「ギルドに急ごう」
野営地を離れると、森の中を急いで進んでいく。途中魔物に出くわしたから、倒して素材はちゃんと回収しておいた。
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