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お留守番①
「それじゃあ行ってくるね」
装備を整えたダリウスが立ち上がる。ギルドから選ばれたメンバーがダンジョンの調査に向かうため、数日は離れ離れだ。
「気をつけてな」
玄関先で見送りをしてやる。
「数日ツバサに会えないなんて耐えられそうにもない」
「大袈裟だな」
俺を抱きしめながら落ち込んだようにため息をつくダリウス。思わず笑ってしまう。
「俺にとっては死活問題なんだよ」
「あはは、悪い。帰ってきたら沢山甘えてくれていいからさ」
「……わかったよ」
なだめてやると、ようやく離れてくれる。少し名残惜しい気もするけど、リアムとの待ち合わせ時間に遅れたら大変だからな。
出発したダリウスを見送ってから、俺もエドの所に行く準備を始める。エドの屋敷へは行ったことがあるから、一人でも辿り着けると思う。
ダリウスの居ない屋敷は静かすぎて少し寂しく感じる。こんなに広い屋敷をダリウスは一人で管理しているけれど、使用人を雇う気はないみたいだ。理由は聞いていない。
「よし、行くか」
着替えを終えて、荷物を手に取ると俺も屋敷を出た。
無事に辿り着くと、門番に声をかける。前もって伝えておいてくれたのか、すぐに中へと通してくれた。今日はジェイデンは居ないみたい。少し残念だ。
屋敷内は凄く綺麗で、華美すぎない洗練な雰囲気を纏っている。エドらしい。
執務室に案内されると、大量の資料に囲まれたエドが執務机に腰掛けていた。
「久しぶりだね。出迎えができなくて申し訳ない」
「かまわないよ。仕事大変そうだな」
「大したことはないよ。紅茶は飲めるかな」
「おう」
エドが使用人に紅茶を頼んでくれる。執務席から立ち上がると、備え付けのチェアへと腰掛け直した。俺も促されて目の前のチェアに座る。
「数日世話になる。無理言ってごめんな」
「ツバサのお願いならいつでも歓迎するよ。髪を切ったんだね。よく似合っている」
「へへ、ありがとう」
用意された紅茶に角砂糖を入れながら、エドが目を伏せる。色素の薄い髪が、大窓から差す光に照らされてキラキラと輝いていて綺麗だ。
エドは相変わらず不思議な雰囲気を纏っている。王族は皆こんな感じなんだろうか。
「ドラゴンの卵が見つかったそうだね」
「そうなんだよ。ダンジョン内にあったんだけど、ダリウスはその卵に心当たりがあるみたいだった」
「……そうだろうね」
「なにか知ってるのか?」
ドラゴンと聞くとクリスを思い出す。祭事の日に突然現れたドラゴンは大暴れして、ダリウスに退治された。でも、そのときクリスは死んだって……。ドラゴンを倒したのはダリウスなのにどうしてクリスは助からなかったんだ?
きっとそこに真実が隠されている。
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